老後2000万円問題の実態とは?これから本当に必要な貯蓄額について

新型コロナウイルスが猛威を奮う真っ只中、景気の波も大幅な落ち込みを見せています。

コロナが原因による雇用の影響は新卒採用に留まらず、解雇や雇止めの拡大にまで及んでおり、総務省発表データによると8月の完全失業率は3%でした。

3年3か月振りの景気の冷え込みですが、新型コロナウイルスの収束に及んでいない現在では、更に広がりを見せる恐れがあります。

急に降りかかった世界的な恐慌に不安は強まります。

しかし、終わりが見えないからこそ、自分を守るために資産を増やそうという動きが活発になってきています。

このコロナ禍の中で新規の証券口座開設数は急増しました。

「年金2000万円問題」をご存じでしょうか。

コロナの影響で収入が減り、不安定な世の中で「将来の資産のことも考えていかなければいけない」と考える人が増えました。

今回の世界的な危機において、老後資産を増やすための投資に向き合う傾向が高まってきたのです。

「老後2000万円問題」とは2019年6月に金融庁の金融審議会が公表した報告書で、中身は「老後は公的年金以外に老後資金を2000万円以上用意する必要がある」という内容になります。

コロナ禍で「年金2000万問題」がより注目を集めていますが、私達の将来の年金の実態はどうなっているのか?

検証していきます。

目次

老後2000万円問題の真相!本当の不足額はいかほど?

老後資金2000万円問題とは

2019年6月に金融庁の金融審議会が公表した報告書で老後は公的年金以外に老後資金を2000万円以上用意する必要があるというのがその内容です。

しかし、2000万円は最低限切り詰めて生活しても足りない額であり、実際、普通の生活を営むのであれば心もとないといえます。

実際、統計局の調査によれば、現在老後を迎えている高齢夫婦世帯の1か月にかかる平均消費は約27万円です。

65歳から平均余命である85歳前後位までの生涯生活費は単純計算で以下の通りです。

例):<老後の生涯生活費>270,000円×12ヶ月×20年=64,800,000円

例):<老後の年金>220,000円×12ヶ月×20年=52,800,000円 ※85歳まで受給できると想定

 

実際の生活費と年金との差額で1,800万円の赤字が出る計算です。

この赤字分は個人の貯蓄からねん出してもらうことになる、というのが報告書に書かれた内容になります。

2000万の貯蓄では不足の見通し

令和2年4月発表の厚生年金※(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は220,724円 です。

しかし、この額は現在年金を受給している人の額であり、将来にわたって保障される額ではありません。

厚労省が5年に1度発表する「財政検証」という調査データをご存知でしょうか。

「財政検証」とは、将来の年金の給付状況を、5年に1度検証したデータになります。

2019年のデータでは、所得代替率は61.7%です。

「所得代替率」とは現役男性の平均手取り収入額に対する年金額の割合によって算出される額です。

所得代替率:22万円÷35.7万円≒61.7%

厚労省がいくつかの経済成長のパターンごとにたてた所得代替率の予測見通しをご覧ください。

ケース

経済成長率

所得代替率

ケース1

0.9%(2046年度)

51.90%

ケース2

0.6%(2046年度)

51.60%

ケース3

0.4%(2047年度)

50.80%

ケース4

0.2%(2044年度)

46.50%

ケース5

0%(2043年度)

44.50%

ケース6

-0.5%(2043年度)

36~38%

参考元:将来の公的年金の財政見通し

約20数年後、経済成長が順調に進んだ場合でも所得代替率は51.90%、最悪のケースだと所得代替率は36%~38%にまで落ち込みます。

ケース1~3は経済成長・女性、高齢者の労働参加が順調に進んだですが、ケース3でも50%を下回る寸前です。

ケース4・5は経済成長がある一定程度進んだ場合です。

こちらは50%を割り込んでいます。

ケース6は経済成長が進まなかった最悪の状態の試算ですが36%~38%までに落ち込みました。

ケース6の最悪な状況での年金額を計算してみると以下の金額になります。

ケース6での年金額(例):35.7万円×36%=12.8万

現在の受給額と約10万の乖離が生じています。

この年金額と生活費の差額は3400万になり、金融庁の言うところの2000万と1400万もの乖離になっています。

2000万円を運用する方法について知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。

2000万円の資産運用におすすめの投資4選と始める際のポイントとは

先行き不安からの投資への期待の高まり

老後資金として自助努力で用意しなければならない額が2000万を大幅に超過する可能性と共に、コロナショックによる経済的ダメージが加わりました。

昨年よりも将来への不安が高まったことで貯蓄への意識が一層の高まりを見せ、貯蓄の手段としての投資に関心が集まっています。

新規で証券口座を開設する人が急増!

今回のコロナショックによる株価急落は2008年のリーマンショックをも凌ぐ深刻な事態と言われています。

一方、そういった将来への不安が高まるほど個人資産の投資への関心が高まりを見せ始めています。

現に、SBIホールディングス(8473)の北尾吉孝社長は2020年4~6月期の決算説明会で「コロナ禍の影響による新規口座開設数の急増があった」と述べています。

コロナ禍において、金融機関の店頭に行って証券口座を開設をし、対面で営業員とやりとりするのではなく、口座開設から取引までを全てオンラインで完結する動きが活発になりつつあるため、以前よりも気軽に投資に踏み出すことが可能になってきています。

また、リモートワーク等で自宅で仕事をする人が増えてきているので、投資のことを考える時間的な余裕もうまれたことも新規口座開設数急増の一因ともいえるでしょう。

コロナショックが受けた経済的ダメージは大きいですが、一方では「デジタルトランスインフォメーション」が進むといったプラスの側面もあったのです。

「デジタルトランスインフォメーション」とは簡単に言うと、IT技術の活用により、生活を暮らしやすくすることです。

オンラインで投資を始めて、資産を着実に増やすことで、万が一のことに備えるという考えにシフトしていくことをおすすめします!

投資が怖く感じる理由

コロナショック前の2019年は世界的な株価上昇とも言われ、NYダウは3万ドル近辺まで近づきました。

しかし、コロナショックによって株価は急落。

3月には2万円台を割り込みました。

これを受けてやはり投資は怖いと思ったり、始めようと考えていた矢先に諦めたといった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、その後株価は急上昇し、現在はまた3万ドル近くまで回復しています。

短期間の間に大きく乱高下をする株価。

将来に備えて投資を始めるといっても先行きがわからず、株価も不安定な中で投資は難しい、とも考えた方も少なくはないでしょう。

短期で利益を出すことの難しさ

3月にコロナショックでNYダウが急落しましたが、その後すぐに急回復しました。

この回復は債券市場から株へ市場とドルが流れたことが大きな原因によります。

また、株価が回復した背景には債券の資金が株へ流れただけでなく、コロナ禍で急速に需要が高まったネット通販やビデオ会議などを下支えした大手ハイテク企業の存在も影響しています。

世界的に経済活動がストップする中で、このように株価が急回復するというシナリオはプロでも中々予測できない事態です。

コロナ禍の市場を活用し短期で大きな利益を得ようとするのは非常に難しいといえます。

その理由は今回のコロナ禍においても実証されましたが、金融の専門家が研究を重ねて算出した適正価格と実際の値動きはほとんどが乖離しているからです。

下のイメージ図をご覧ください。

実際の株価は専門家が研究してきた理論的な適正価格(理論価格)に重なることはなく乱高下を繰り返しているのです。

一般的には、理論株価と実際の株価を比較して、実際の株価が理論株価よりも安ければ「割安」、高ければ「割高」と判断できるといわれています。

しかし、短期的な株価の値動きは世界の経済情勢だけでなく、人の思惑によっても左右されます。

理論価格のデータも直近の成長率や業績をもとに計算されているので突発的に起こった事象については考慮されません。

投資を始めるのはやっぱり怖いという人はすぐに利益をだしたいという、言わば一攫千金や宝くじのような投機的なものとしての投資を考えているからです。

短期で投資を成功させようとは考えず、中長期的な投資を考えましょう。

安定的に投資を続けていく手法はあります。

長期で安定した投資のすすめ

投資で投機的に大きく稼ぐという手法をとるのは一昔前の話です。

今や投資は豊かな老後をおくるための計画として誰もが組み入れるのが普通です。

こちらのグラフをご覧ください。

出典:日本証券業協会

証券会社におけるNISA口座数の推移をみると、2020年6月末の証券会社のNISA口座数は860万口座で、2020年3月末と比較して4.2%増加しています。

着々と増え続ける口座数のデータから、世間の資産運用への意識の高まりが見受けられます。

NISAは少額から始められる資産運用の一つですが、NISA以外にも資産運用商品はあります。

投資資産はリスクの分散がポイント

分散投資とはリスクを軽減する目的で、国内外の株・債券・投資信託等の金融商品に分けて資金を投入することです。

一極集中で資産形成していると、物価が上昇した時にお金の価値が低下してしまうというリスクがあります。

今回のコロナショックでも外貨建ての債券価格が大幅に下落し、外国株は値上がりするという動きがありました。

外国債券を所有して損失を被っても、外国株を所有していればリスク回避になります。

リスクを分散することで値上がり効果を期待できるのです。

以下の図をご覧ください。

リスクとリターンのイメージした図です。

金融市場で言うところのリスクとは資産価値の値下がり、リターンは値上がりになります。

投資におけるリスクとリターンの関係は

・リスクが高いほどリターンを得られる

・リスクが小さいほどリターンは小さい

と言われます。

老後の資金を積み上げていくという目的であれば、リスクは取らず、たとえ小さなリターンでも着実なリターンを得る方が賢明と言えるでしょう。

リスクとリターンの関係についてはこちらの記事でもご参考頂けます。

投資のリターンとは?リスクとリターンの関係を知って最適な投資を!

少額から始める

長期で着実にリターンを掴むには少額でいいのでコツコツと貯めていくのがおすすめです。

余裕がないという方でも数千円~数万円程度までであればやってみようかな?という気持ちになるのではないでしょうか。

まとめ

いかかでしたか?

不運にもコロナショックに見舞われたという方、まだ影響は受けていなくとも先行きに不安を覚えている方、あるいは以前から「年金2000万円問題」に不安を覚えていた方のお役に立てたでしょうか。

年金の不足額が2000万では済まない可能性も大きく、個人の自助努力は必須です。

お金を増やすことができる時間は限られています。

収入が減っているから厳しいという方でも数千円~数万円程度のねん出でいいので始めておくだけで老後に豊かな生活を送れる可能性は高まります。

是非、思い立ったこの機会に始められてはいかがでしょうか。

 

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