株式投資をする上で利回りを計算することは、年間でどの程度の利益がでるのかを判断するうえで必要になります。
株式を売買した際の利回りは購入の時期や銘柄にもよりますが、配当による平均利回りは東証一部で約2.6%と言われています。
この記事では株式投資の利回りについて詳しく解説していきたいと思います。
株式投資の利回りの計算方法
株式に投資するにあたって、その株式が年間でどのくらいの収益を生むのか把握することは重要です。
その株式に投資するかどうかを判断する材料にもなります。
株式投資の利益は、売買することで得られる売買差益(キャピタルゲイン)と企業ごとに決まった月に受け取れる配当金(インカムゲイン)があります。
この二つの利益を合計した額が株式の年間の利益になります。
このことを踏まえたうえで、株式の年間利回りを計算する計算式は下記の様になります。
- キャピタルゲイン=(現在株価×購入株数)-(購入株価×購入株数)
- 年間の利益=キャピタルゲイン(売買差益)+インカムゲイン(配当金)
- 利回り=年間の利益÷投資元本×100
まずは、売却した際の利益(キャピタルゲイン)を算出して、配当金と足し合わせて年間の利益を計算して、最後に投資元本で割る必要があります。
具体的な例をあげて考えてみましょう、株価1,000円で100株購入した株式Aが1年後に株価が1,200円になったとします。
1株あたりの配当が15円であり、100株あたり年間で1,500円の配当金が発生します。
投資元本は100株×1,000円なので100,000円です。
これを上記の計算式に当てはめてみましょう。
- (1200×100)-(1000×100)=20,000円(キャピタルゲイン)
- 20000+1500=21,500円(年間利益)
- (21500÷100000)×100=21.5%(利回り)
つまり、この株式Aの利回りは21.5%であることが分かります。
ただし、キャピタルゲインは損をしてしまった場合マイナスとなるので、株式投資の年間の利回りはマイナスになることもあります。
次に株式投資の利回りと利率の違いについて解説していきます。
利回りが重要な金融商品は株式の他には債券があります。
債券の利回りについて知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
債券価格や利回りの計算方法とは? 計算シミュレーター付き!
利回りと利率の違い
株式投資の利回りと利率は似ているようで大きく異なるものです。
利回りは株式投資で得られた全ての利益の割合を指しますが、利率は株式投資で得られた配当金による利益の割合を指します。
株式の利率の計算式はこのようになります。
利率=配当金÷投資元本×100
投資元本が300万円で1年間あたり15万円の配当金を企業から得ていたとします。
このときの利率を上記の計算式に当てはめて求めると「15万円÷300万円×100=5%」となります。
キャピタルゲインを含む利回りは株価の変動によって大きく利回りが異なることがありますが、配当金は企業によって定められているので計算しやすいです。
ただし、企業の業績によっては配当金の増配や減配が発生することもあります。
優待利回りの計算方法
優待利回りとは株主優待の利回りのことです。
株主優待は企業によっては無いこともありますし、内容も異なります。
具体的に送られてくる優待には割引券や企業の商品などがあります。
優待が投資額に対して、どれだけ株主にとって優待が利益になるかを考えるのが優待利回りです。
もちろん、優待利回りは数値が高いほどお得です。
優待利回りは以下の式で求められます。
優待利回り=株主優待の価値÷投資金額×100
たとえば、投資額が10万円で、A社の株主優待で1,000円の商品券をもらったとします。
A社の株式の優待利回りは、1,000円÷10万円×100=1%となります。
割引券であれば割引される価格、商品であれば実際に購入した場合の価格から算出してもよいでしょう。
株式投資の利回りの目安
しかし、株式に投資をしたことがない人からすれば、1%や5%の利回りが高いのか安いのか判断することは難しいと思います。
この項目では株式投資の利回りの目安について解説していきます。
東証一部と二部の配当利回りの平均
配当利回りは証券会社から会社予想の値を見ることができます。
東証一部と東証二部の平均配当利回りは以下の通りとなっています。
- 東証一部の平均配当利回りは2.61%(2018年9月)
- 東証二部の平均配当利回りは1.66%(2018年9月)
東証一部の平均配当利回りが2.61%であるとすれば、配当利回りが3%以上であれば配当利回りの良い株式であると言えるでしょう。
株式投資と定期預金の利率を比較
3%の利回りは少ないと感じる人もいるかもしれませんが、株式投資と定期預金を比べると大きく利率が異なっています。
100万円の資産を東証一部上場の企業に投資した場合とゆうちょ銀行の定期預金に預けた場合を比較しましょう。
まずお互いの利回りについて比較していきます。
東証一部上場企業の配当利回りは2.61%でゆうちょ銀行の定期預金の利率は0.01%となります。
この2つの利回りの差は一目瞭然です。
- 配当利回りが2.61%の株に100万円を投資した場合、
100万円×2.61%=2万円の配当金を受け取ることができます。 - 預金金利が0.01%のゆうちょ銀行の定期預金に預けた場合、
100万円×0.01%=100円を受け取ることができます。
2万円と100円を比較すると19,900円もの差額がありました。
ただし、定期預金は元本が保証されているので利回りがマイナスになることはありませんが、株式の利回りはキャピタルゲインによってはマイナスになることもあるので注意が必要です。
株式投資は配当利回りだけでも定期預金よりも多くの利益が得られることが分かります。
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100万円から始める資産運用とは?最もおすすめな6つの方法!
利回りの平均と目標
株式投資の利回りの平均は年間で5%前後の利回りと言われています。
30万円を株式投資に運用した場合は利回り5%であるため1.5万円の利益が発生することが期待できます。
株式投資を長期にわたっておこなうのであれば、平均に近い4~7%を目指すべきでしょう。
そのためには株価の変動が少なく、業績が安定しており、配当利回りの高い株式に投資をする必要があります。
基本的に利回りを良くするためには配当の高い銘柄に投資するほうがよいですが、高配当という理由だけで投資をすることは危険な場合があります。
次の項目では高配当株の思わぬ落とし穴について解説していきます。
高配当株の3つのリスク
配当利回りが高いからといって必ず良い銘柄とは言えません。
高配当であるという理由で株式に投資をすることには3つのリスクがあります。
- 業績の悪化による減配
- 値下がりで配当金以上の損失が発生
- 配当利回りは時間とともに変化する
それでは、上記の高配当株のリスクについて解説していきます。
業績の悪化による減配
1つ目のリスクは企業の業績の悪化による減配の可能性があります。
そもそも誰も購入していない高配当銘柄の発掘はまずあり得ません。
株式市場は市場の参加者によってすべての銘柄が監視されているので、業績の良い高配当銘柄が放置される可能性は非常に低いです。
では、高配当銘柄がなぜ放置されているのか?と言うことを考えるべきです。
配当利回りが高いということは株価が下がっている状態にあることが多いです。
これは将来的に業績が悪化すると考えられているためです。
業績悪化を見越して株が売却されていきます。
そのうえで、企業は株の売却をとめるために高配当にすることがあります。
このときだけを切り取ると、株価が安く高配当の銘柄が放置されているように見えるかもしれません。
しかし、根本的な問題が解決していないため株価は下落していきます。
その結果、企業が配当金を支払えないと判断すれば、配当が減配される可能性もあります。
5%以上の高配当株の中には業績が悪化したため高配当である場合もあるので気を付けましょう。
値下がりで配当金以上の損失が発生
配当利回りが10%の株式があっても、株価が購入したときの半分以下になってしまえば配当金以上の損失が発生してしまいます。
つまり、配当金だけで利益をあげようと考えていたはずが、キャピタルゲインだけで赤字になってしまう危険性があるのです。
高配当であっても株価の上がる見込みのない株式に投資することはおすすめできません。
配当利回りは時間とともに変化する
最後に、株式の配当利回りは時間とともに変化します。
なぜなら、配当利回りには時間軸が加味されていないので5年後や10年後の利回りが維持されるとは限らないからです。
また企業の出す配当金は固定されていることが多いです。
そのため、株価が上がれば配当利回りは下がります。
一方、株価が下がれば配当利回りは上がります。
現在の配当ではなく将来的な配当はどうなるのか考えましょう。
結論としては、高配当株に投資するよりも配当利回りが3%近くで業績が良く株価の上がる見込みのある株式に投資するほうが、リスクも少なく全体の利回りも上がっていきます。
利回りを大きくする複利
仮に株式投資の20年間の利回りを平均で5%にできたとすれば資産は2倍になります。
しかし、それは「単利」での話です。
配当金や株主優待だけではなく「複利」を使って資産をどんどん増やすことができます。
複利について理解すれば、その効果を用いてさらなる利益を生み出すことができます。
単利とははじめに預けた元本にたいしてのみ利息がつきます。
一方、複利ははじめに預けた元本から発生した利息を元本に組み入れて利息を再運用していきます。
わかりやすくするためグラフにまとめてみました。
1枚目のグラフは単利です。
単利は利息が元本から計算されるため一定額ずつ増えていきます。
2枚目のグラフは複利です。
複利は元本の利息の合計に対して利息が計算されます。
そのため時間が経てばたつほど利益がでる仕組みとなるのです。
元手が同じ額でも10年後には大きな差額が生まれます。
仮に株式を元本200万円で4年間の間年利10%で運用できたと仮定しましょう。
年数 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 |
単利 | 220万円 | 240万円 | 260万円 | 280万円 |
複利 | 220万円 | 242万円 | 266万円 | 292万円 |
差額 | 0万円 | 2万円 | 3万円 | 12万円 |
単利は元本200万円に利息が10%加わります。1年経つごとに10万円増えていきます。
複利は1年目は単利と同じく220万円ですが、得た利息を含んで新しい元本として計算されるため単利と比べて利息が大きくなります。
たとえば、2年目に得た242万円を元本にするため242万円に10%利息がつく一方で単利の場合は220万円に10%の利息がついて240万円となっています。
これは短いスパンでの比較ですが、長期スパンで見た場合はさらに大きな利益を生みます。
下の図を見るとわかるように雪だるま式に利益が増えていきます。
年数 | 10年 | 20年 | 30年 | 40年 |
単利 | 400万円 | 600万円 | 800万円 | 1000万円 |
複利 | 518万円 | 1345万円 | 3489万円 | 9051万円 |
差額 | 118万円 | 745万円 | 2689万円 | 8051万円 |
10年で118万円の差額が出ています。
40年後には約8000万円以上の利益の差が生まれることになります。
配当金を再投資する複利で株式の利回りをより大きなものとしていきましょう。
複利のデメリット
ここまで複利のメリットを述べてきましたが、リスクについても2つご紹介したいと思います。
マイナスリターン
複利のリスクは単利に比べてマイナスリターンに弱いという弱点があります。
単利の場合では配当が再投資されずに利益として手元に残ります。
複利は配当が再投資に回されるため資産が常にリスクに晒されている状態にあります。
もし運用成績がマイナスになった場合は全てが元本資金になっているので損失が大きくなります。
最悪の場合は今までの利益が一気になくなる可能性もあります。
雪だるま式に運用資金を増やすことができる一方で損失も増えてしまう可能性は考慮するべきです。
利回りが不確定
株式投資は毎年のように安定した収入があると考えてはいけません。
上記の例は、あくまで年利〇〇%という仮定の話で進めています。
株式の利回りを左右する不確定要素の例としては自然災害や企業の不祥事問題など懸念事項は多くあります。
複利投資であっても、利回りが不確定であるため年によって利益に差があると考えておきましょう。
複利投資は単利と比較してメリットも大きいですが、リスクも高いので自己責任で投資をしましょう。
まとめ
株式投資の利回りについて理解していただけたでしょうか?
株式の利回りは配当だけではなく、売買差益によるキャピタルゲインも含まれているので長期で安定して利益をあげ続けることには向いていません。
しかし、定期預金などの利率と比較するとリスクはありますが、総合的にメリットがあると言えます。
複利投資なども利用して株式投資で計画的な資産形成を目指していきましょう。
株式投資についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
株式投資とは?株式投資の仕組みと始め方を徹底解説!