資産運用に興味を持っても「50代からNISAを始めても遅い」と考える人は少なくありません。「NISAは若い時から始めたほうが有利」と言われることがありますが、運用期間や資金力を考えると50代でも決して遅くはないでしょう。また、近年ではさまざまな理由で実際にNISAを始める50代が増えています。
本記事では、50代からNISAを始めても遅くない理由を実際のデータやシミュレーションと合わせて紹介します。記事を読むことで50代も資産運用を始める必要性があることが理解できるようになるでしょう。
50代からNISAを始めても遅くない理由

50代からNISAを始めても遅くない理由は以下のとおりです。
- 老後までの運用期間は10年程度確保できる
- 預貯金だけでは今後の物価上昇に対応しにくい
- 若い世代よりも投資金額を増やしやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
老後までの運用期間は10年程度確保できる
50代からNISAを始める場合でも、老後までの運用期間は10年程度確保できると考えられます。例えば、60歳~70歳まで働くと仮定するなら、退職までに資産を増やす時間は十分にあるでしょう。
10年の運用期間があれば、価格の上下を繰り返しながらも、長期的に資産の成長を期待できます。短期間で大きな利益を狙うリスクのある方法を選ばずに、老後までに安定して資産を増やすことが可能です。
預貯金だけでは今後の物価上昇に対応しにくい
現在は物価上昇の影響により、預貯金だけでは資産の価値を維持しにくい状況が続いています。銀行に預けていても利息はわずかであり、物価の上昇に対して資産が目減りしてしまう可能性もあるからです。
物価が上昇すれば同じ金額でも、実際に買えるものは年々少なくなります。50代は退職して現在の預貯金を取り崩すまでに10年の期間があります。10年間、物価が大きく上昇し続けることがあれば、老後の資産は大きく目減りするでしょう。
NISAでは多くの場合、投資信託と呼ばれる金融商品に投資して資産形成をおこないます。投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家が株式や債券などに分散して投資する金融商品です。個別の銘柄を自分で選ぶ必要がなく、少額からでも幅広い資産に投資できる点が魅力になります。
将来を考えると、資産運用を始めないこと自体がリスクになる場合もあります。物価の上昇に対応して、資産を守るためには50代もNISAが必要です。
若い世代よりも投資金額を増やしやすい
50代は若い世代と比べて収入や貯蓄に余裕があるケースも多く、投資に回せる金額を確保しやすい傾向があります。子どもが独立して教育費などの支払いがなく、住宅ローンの返済が済んでいる50代は、ほかの年代と比較しても貯金しやすいでしょう。
投資は運用期間が重要ですが、投資金額も結果に大きく影響します。若い世代より運用期間が短くても、積立額を増やすことで資産形成を効率的に進めることが可能です。無理のない範囲で高い投資金額を設定しやすい点は、50代がNISAを始めるうえで強みになります。
実際に50代でNISAを運用する人のデータ

50代からNISAを始める人は年々増えており、幅広い年代で資産形成の手段として定着しつつあります。具体的なデータをもとに50代でNISAを活用している人の実態を見ていきましょう。
口座開設数と増加率
2024年12月から2025年6月のNISA口座数と増加率を年代ごとにまとめました。
| 年代 | 2024年のNISA口座数 | 2025年のNISA口座数 | 増加率 |
|---|---|---|---|
| 10代 | 11万9,782口座 | 15万3,866口座 | 28.50% |
| 20代 | 295万112口座 | 312万9,996口座 | 6.10% |
| 30代 | 448万6,512口座 | 472万4,419口座 | 5.30% |
| 40代 | 492万3,179口座 | 515万9,263口座 | 4.80% |
| 50代 | 495万1,402口座 | 524万6,336口座 | 6.00% |
| 60代 | 377万942口座 | 397万7,471口座 | 5.50% |
| 70代 | 283万9,669口座 | 299万4,324口座 | 5.40% |
| 80代以上 | 154万4,862口座 | 157万4,426口座 | 1.90% |
参考:金融庁『NISA口座の利用状況』
20代~70代では、NISA口座数の増加率に世代間の格差はなく5%~6%程度になります。なかでも50代は、NISA口座数がほかの世代と比較して、もっとも多い524万6,336口座です。さらに、60代~70代の口座数も増加率が大きく下がる傾向はありません。
80代以上では増加率が1.9%にとどまるものの、50代は20代に次いで高い増加率です。少なくとも、50代からNISAを始めるのは遅いとは言いきれない実態があり、始め時と考えることもできるでしょう。
始めた動機・目的
50代でNISAを始めた人の動機・目的を以下にまとめました。
| 目的 | 割合 |
|---|---|
| 将来・老後の生活資金 | 66.80% |
| 資産形成自体が目的 | 36.50% |
| 将来の不測の事態に対する備え | 27.00% |
| 物価上昇対策 | 19.10% |
| 日々の生活資金 | 10.30% |
| 子どもや孫の教育資金 | 6.40% |
| 自動車・家電やスポーツ・旅行などの費用 | 4.60% |
| 住宅の取得・結婚などのライフイベントの費用 | 2.80% |
| その他 | 0.30% |
| 特に動機・目的はない | 7.20% |
参考:日本証券業協会『新NISA開始後の利用動向に関する調査』
50代でNISAを始めた人の動機としてもっとも多いのは、「将来・老後の生活資金」で66.8%を占めています。「資産形成自体が目的」が次に位置するため、投資自体を前向きに考えている人も多いです。「物価上昇対策」は若い世代ほど意識しやすい傾向にありますが、50代でも少なくない動機になっています。
年間の積立金額
50代でNISAのつみたて投資枠を利用している人の投資信託への年間の積立金額を以下にまとめました。
| 積立金額 | 割合 |
|---|---|
| 5万円未満 | 18.20% |
| 5万円~10万円未満 | 11.50% |
| 10万円~20万円未満 | 11.40% |
| 20万円~40万円未満 | 14.20% |
| 40万円~60万円未満 | 10.10% |
| 60万円~80万円未満 | 5.20% |
| 80万円~100万円未満 | 4.80% |
| 100万円~120万円未満 | 4.40% |
| 120万円 | 20.40% |
参考:日本証券業協会『新NISA開始後の利用動向に関する調査』
NISAのつみたて投資枠の上限は120万円ですが、毎月10万円の積立金額で年間120万円を投資している50代の割合は20.4%であり、全体でもっとも多いです。平均値は49.5万円であり、毎月の積立金額では約4万円になります。
積立金額は、無理のない範囲で設定することが重要です。あくまでデータは積立金額を設定する参考値と考えるようにしましょう。
50代でNISAを始める場合のシミュレーション

NISAのつみたて投資枠で、投資信託を50代から60代の10年間運用すると仮定し、年率5%の利回りを想定した場合のシミュレーションを以下にまとめました。
3万円から積み立てる場合
月3万円から積み立てる場合のシミュレーションは以下のとおりです。
| 運用期間 | 元本 | 利益 | 運用成果 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 36万円 | 1万円 | 37万円 |
| 2年目 | 72万円 | 3万円 | 75万円 |
| 3年目 | 108万円 | 8万円 | 116万円 |
| 4年目 | 144万円 | 15万円 | 159万円 |
| 5年目 | 180万円 | 23万円 | 203万円 |
| 6年目 | 216万円 | 34万円 | 250万円 |
| 7年目 | 252万円 | 48万円 | 300万円 |
| 8年目 | 288万円 | 64万円 | 352万円 |
| 9年目 | 324万円 | 82万円 | 406万円 |
| 10年目 | 360万円 | 103万円 | 463万円 |
月3万円の積立では、元本360万円に対して約103万円の利益が見込まれ、運用成果は463万円となりました。大きな負担になりにくい金額でも、継続することで着実に資産を増やせます。投資に慣れていない方でも始めやすい水準です。
5万円から積み立てる場合
積立金額を増やして5万円を積み立てる場合のシミュレーションを以下にまとめました。
| 運用期間 | 元本 | 利益 | 運用成果 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 60万円 | 1万円 | 61万円 |
| 2年目 | 120万円 | 6万円 | 126万円 |
| 3年目 | 180万円 | 13万円 | 193万円 |
| 4年目 | 240万円 | 24万円 | 264万円 |
| 5年目 | 300万円 | 39万円 | 339万円 |
| 6年目 | 360万円 | 57万円 | 417万円 |
| 7年目 | 420万円 | 80万円 | 500万円 |
| 8年目 | 480万円 | 106万円 | 586万円 |
| 9年目 | 540万円 | 137万円 | 677万円 |
| 10年目 | 600万円 | 172万円 | 772万円 |
月5万円に積立額を増やすと、元本600万円に対して約172万円の利益となり、運用成果は772万円まで伸びます。積立額を増やすことで利益の増加幅も大きくなり、より効率よく資産形成を進めやすくなるでしょう。
10万円から積み立てる場合
つみたて投資枠の上限である10万円を積み立てるシミュレーションは以下のとおりです。
| 運用期間 | 元本 | 利益 | 運用成果 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 120万円 | 3万円 | 123万円 |
| 2年目 | 240万円 | 12万円 | 252万円 |
| 3年目 | 360万円 | 27万円 | 387万円 |
| 4年目 | 480万円 | 49万円 | 529万円 |
| 5年目 | 600万円 | 78万円 | 678万円 |
| 6年目 | 720万円 | 115万円 | 835万円 |
| 7年目 | 840万円 | 159万円 | 999万円 |
| 8年目 | 960万円 | 212万円 | 1,172万円 |
| 9年目 | 1,080万円 | 273万円 | 1,353万円 |
| 10年目 | 1,200万円 | 344万円 | 1,544万円 |
月10万円の積立では、10年間で元本1,200万円に対して約344万円の利益が見込まれ、運用成果は1,544万円に到達します。投資枠の上限まで積み立てると、50代からNISAを始めても大きなリターンが期待できるでしょう。
シミュレーションの結果を参考に目標にする利益や無理のない積立金額を考えたうえで、NISAを始めることをおすすめします。
50代からNISAを始める時に押さえたいポイント

50代からNISAを始める時に押さえたいポイントは以下のとおりです。
- 運用の目的をはっきりさせる
- 近い将来必要になるお金は投資に回さない
- リスクの大きい商品に集中して投資しない
- 長期・積立・分散を意識する
- 無理のない積立額から始める
- 出口戦略も考える
それぞれ詳しく解説します。
運用の目的をはっきりさせる
運用期間が限られる50代では、ゴールを意識した計画的な運用が欠かせません。そのため、運用の目的をはっきりさせることが重要です。例えば、退職後の備えを目的にNISAを始める場合は、60歳に退職すると仮定するなら、10年間運用してから取り崩すと考えられるでしょう。
一方で、資産形成そのものを目的にする場合や、物価上昇対策を考える場合は必ずしも10年後に取り崩すことを想定しないケースも。その場合は、50代であっても10年を超える運用期間を想定して長期的に運用できます。
目的が明確になれば、運用期間の目安がわかり、毎月の積立金額から想定されるリターンをシミュレーションできます。自分の状況に合った運用方針を決めるためにも、最初に目的を整理しましょう。
近い将来必要になるお金は投資に回さない
50代からNISAを始める場合は、近い将来必要になるお金を投資に回さないよう注意が必要です。投資信託は元本保証ではなく、短期的には価格が下がることもあるため、必要なタイミングで資金が減っているリスクがあります。
生活費や数年以内に発生するまとまった出費などを投資に回すと、相場の下落時に取り崩さなくてはならないことも。投資に回すお金は、当面使う予定のない余裕資金であることが基本です。基本的には半年分の生活費を現金として確保したうえで、残りの資金を運用に回すとNISAを継続しやすくなります。
リスクの大きい商品に集中して投資しない
50代からNISAを始める場合は、リスクの大きい商品に集中して投資しないことが重要です。50代は運用期間が限られているため、一度の大きな損失が資産形成の結果に影響しやすい点に注意が必要になります。そのため、損失を取り戻す時間が足りなくなるリスクも。
投資信託を選ぶ場合、リスクの高い株式型だけでなく、値動きが安定しやすい債券型の投資信託を組み合わせると、リスクを抑えながら運用できます。50代からの資産運用では、増やすことよりも、資産を守りながら安定した運用を目指すことが重要です。
長期・積立・分散を意識する
50代からNISAを始める場合、長期・積立・分散の考え方を意識しましょう。おすすめの投資方法は、投資信託への長期的な積立投資になります。毎月一定額を積み立てることで、価格が変動する商品を購入する時、長期的に継続すれば購入価格を平均化できます。
NISAの投資対象である投資信託は、国内・海外の株式・債券などに分散して投資できるため、全体の値動きを安定させやすくなります。長期・積立・分散を意識した投資は、運用の安定性を高めるうえで有効です。
無理のない積立額から始める
NISAを始める場合は、無理のない積立額からスタートすることが重要です。最初から収入と比較して高い金額を設定すると、家計への負担が大きくなり、途中で継続できなくなる可能性があります。
投資は継続することが前提となるため、生活費を圧迫しない無理のない範囲で積立額を決めることが大切です。最初は1万円~3万円程度の無理のない金額から始めて、徐々に積立金額を増やす方法も有効になります。無理なく続けられる金額で長く運用を続けることが、NISAで失敗しないために重要になるでしょう。
出口戦略も考える
50代からNISAを始める場合は、あらかじめ出口戦略を考える必要があります。出口戦略とは、運用した資産をどのように取り崩すかを計画することです。運用を始める際には「どのタイミングで使うのか」「どのくらいの金額を取り崩すのか」を決めるようにしましょう。
また、老後資金として活用する場合は、定年後に一度に引き出すのではなく、毎年・毎月などの頻度を決めて一定額を取り崩す選択肢もあります。購入のタイミングだけでなく、取り崩すタイミングも分散させれば、相場の影響を抑えながら資産を活用しやすくなります。資産を増やすだけでなく、使うことを意識した計画を立てることで、より安定した資産運用につながるでしょう。
まとめ
50代からNISAを始めることは決して遅くなく、残っている運用期間と資金力を活かせば現実的な資産形成が可能です。実際のデータからも、同世代でNISAを活用する人は増えており、老後に向けた備えとして定着しつつあります。
50代は資産を増やすだけでなく、どのように使うかまで考える必要がある年代です。今からでも一歩踏み出すことで、将来の安心につながる資産形成を進めましょう。ただし、50代からのNISAは出口戦略を意識する必要があり、若い世代と比較すると考えるべきことが多いです。
失敗のリスクも高いため、専門家に相談したうえで適切な運用方法を考えることがおすすめです。当社では50代からの資産運用に関する総合的な相談内容に対応しています。ぜひお気軽にご相談ください。

