老後の資産運用は現役世代とは異なり、収入を増やすことが難しいため、お金を増やすことよりも、長く守りながら使う姿勢が求められます。そのため、お金を守るためにやってはいけないことを理解することが重要です。運用に失敗すると退職金が減り、老後の生活資金が不足する可能性も。
本記事では、老後の資産運用でやってはいけないことを具体的に整理したうえで、お金を守るために意識すべきポイントを解説します。記事を読むことで、老後の資金を安定して活用するための基本的な考え方がわかるようになるでしょう。
老後の資産運用でやってはいけないこと

老後の資産運用でやってはいけないことは以下のとおりです。
- 退職金の一括投資
- 生活費を投資に回す
- 手数料を考えずに商品を選ぶ
- ハイリスクな投資対象を選ぶ
- 自分が理解できないものに投資する
- 年齢や健康状態を考慮しない長期投資
- 出口戦略を意識しない
- 都合のいい儲け話に乗る
- すべてを他人に丸投げにする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
退職金の一括投資
退職金を受け取ったあと、その資金をまとめて投資に回すことは避けましょう。退職金は老後の生活を支える大切な資産です。短期間で大きな値動きがある投資商品に一度に投入すれば、資産が大きく減る可能性があります。
そのため、退職金を運用する場合は、一括投資ではなく、積立投資など時間を分けて少しずつ投資する方法を検討したいところです。資金の一部は生活費や予備資金として確保し、無理のない範囲で運用しましょう。
生活費を投資に回す
老後の資産運用では、日常生活に必要な生活費を投資に回してしまう行動は現役世代よりもリスクが高いです。老後は、年金収入を中心に生活するケースが多く、収入の増加が見込みにくい状況になります。そのため、生活費まで投資に回してしまうと、医療費などの急な出費に対応できなくなることも。
投資は価格が変動するため、必要なタイミングで資金を引き出そうとしても、相場が下落していると元本割れの状態になっている可能性があります。損失を確定させる行動につながるため、余裕資金の範囲内での投資を心がけましょう。
手数料を考えずに商品を選ぶ
投資対象を選ぶ際には手数料を確認しましょう。金融商品にはさまざまな手数料があり、資産に与える影響は少なくありません。投資信託であれば、購入手数料のほかに、運用中に継続して発生する手数料である信託報酬、解約時に発生する信託財産留保額などの手数料がかかります。
知らずに手数料の高い商品を選ぶと思うような利益が得られない可能性があります。投資対象を選ぶ際には、複数の投資先を、手数料の低さも含めて徹底的に比較する姿勢が大切です。現役時代より時間を取りやすい場合は、慎重に比較しながら投資対象を選びましょう。
ハイリスクな投資対象を選ぶ
老後の資産運用では、ハイリスクな投資対象を選ぶことは避けたいところです。具体的には、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)、自己資金以上の資産を運用できるFXなどのレバレッジを利用する投資方法が挙げられます。
値動きの大きい金融商品は短期間で大きな利益が得られる可能性がある一方で、大きく値下がりするリスクもあります。万が一失敗をして大きな損失が発生すると、生活に影響が出るおそれも。老後の資産運用では、利益の大きさよりも安定性を意識した投資を考えることが重要です。
自分が理解できないものに投資する
老後の資産運用では、仕組みやリスクがわからない金融商品に投資しないようにしましょう。世の中で投資対象とされているものは、仕組みが複雑で値動きの理由がわかりにくいものもあります。
内容を理解しないまま投資すると、価格が下がった時に原因を把握できません。また、商品の仕組みを理解していなければ、想定していなかったリスクを抱えることも。ほかの人にもわかるように正確に内容を説明できない投資対象は、自分でも十分に理解できていないものです。もうかるなどの言葉だけを聞いて、安易に手を出さないようにしましょう。
年齢や健康状態を考慮しない長期投資
投資で安定を目指すなら長期投資が基本です。一方で、老後の資産運用では、年齢や健康状態を考えない長期投資はリスクになります。老後は運用できる期間や資金を使うタイミングが限られている点を踏まえて考える必要があるでしょう。
例えば、長期間引き出せない投資対象に資金を多く配分すると、必要なタイミングで資金を確保できない可能性があります。老後の資産運用では、運用した資金を使うタイミングも意識して投資対象を選ぶことが重要です。
出口戦略を意識しない
老後の資産運用では、現役世代の時よりも具体的な出口戦略を考えることが重要になります。価格が上がることだけを期待して資産を保有し続けると、使いたい時期に相場が下落している可能性があるからです。
積立投資ではタイミングを分けて購入し、価格変動のリスクを分散させますが、売却の際も時期を分けることが有効になります。投資信託であれば、定期売却のサービスを活用することで、設定した条件に合わせて自動的な売却が可能です。老後の資産運用では、投資の始め方だけでなく、出口戦略も考えるようにしましょう。
都合のいい儲け話に乗る
老後の資産運用では、「必ずもうかる」「元本保証で高い利益が出る」などの都合のよい話に安易に乗らないようにしましょう。勧誘のなかには、投資詐欺や実際にはリスクの高い商品が含まれているケースもあります。
特に老後は退職金などのまとまった資金を持っている場合も多く、詐欺や強引な勧誘の対象になりやすい傾向があります。リスクなく簡単にもうかる投資方法は存在しない前提で考えることが重要です。自分にとって都合がよく、魅力的すぎる投資対象があっても、疑いを持つことが資産を守ることにつながります。
すべてを他人に丸投げにする
資産運用に対する知識がない状態では、他人にすべてを任せきりにしたい気持ちがあるかもしれません。資産運用を始めるうえで専門家の意見を参考にすることは重要です。しかし、内容を理解しないまま判断を任せてしまうと、自分に合わない投資対象であっても気付けません。
老後の資産運用では、アドバイスを受ける場合でも最終的な判断は自分でおこなう姿勢が必要です。商品の仕組みやリスクを理解したうえで投資すれば、自信を持って資産運用に臨めるでしょう。
老後の資産運用で意識すべきポイント

老後の資産運用で意識すべきポイントを以下にまとめました。
- 増やすよりも守ることを意識する
- 資産の寿命を意識して取り崩す
- 安定を重視したポートフォリオを意識する
それぞれ詳しく解説します。
増やすよりも守ることを意識する
老後の資産運用では、資産を大きく増やすことよりも、減らさないことを意識した運用が重要です。現役世代は収入があるため、投資に失敗して資産が減っても補える場合があります。しかし、老後は収入が減少するため、投資に失敗した際に損失を補えず、生活に影響を与えることも。
そのため、老後は資産を増やすよりも守ることを意識する必要があります。リスクの高い資産をできる限り避けたうえで、複数の資産を分散して保有すればお金を守りやすくなるでしょう。
資産の寿命を意識して取り崩す
老後の資産運用では、資産の寿命を意識して取り崩すことが重要です。例えば、2,000万円を貯金している場合、毎月10万円ずつ取り崩すと16年8カ月が資産の寿命になります。仮に60歳の時点で取り崩しを開始すると、76歳の時点で資金が尽きる計算です。
しかし、2,000万円を年率5%で運用できた場合は、資産の寿命は34年6カ月に延びます。一方で、取り崩す金額が8万円以下の場合は、仮に60歳から120歳まで生きても資産の寿命は尽きない計算です。
資産の寿命を意識して計画的に取り崩すことで、老後の生活資金を安定して確保できます。投資対象によっては変動要素も大きいため、資産の寿命を正確に把握できない場合もあります。平均寿命を超えて長生きする可能性も想定し、専門家に相談したうえで、できる限り正確なシミュレーションをおこなうとよいでしょう。
安定を重視したポートフォリオを意識する
老後の資産運用では、安定性を意識したポートフォリオを考えることが重要です。ポートフォリオとは、保有する資産の組み合わせや配分のことであり、内容によって資産全体のリスクや安定性が変わります。
例えば、株式などの値動きの大きい資産だけで構成されていると、市場が下落した際に資産全体の価値が大きく下がる可能性があります。一方で、債券など比較的安定した資産を組み合わせれば、価格変動の影響を抑えやすくなるでしょう。
20代から30代の若い世代であれば、株式を中心とするリスクが高くてもリターンを期待できるポートフォリオでも問題ありません。しかし、老後の資産運用では値動きの大きい資産よりも安定した資産の組み入れが求められます。資産の分散と安定性を意識した配分を考えることで、お金を守ることを重視した運用がしやすくなるでしょう。
老後から始められる資産運用

老後から始められる資産運用を以下にまとめました。
- 外貨預金
- 個人向け国債
- 投資信託
- 純金積み立て
- アンティークコイン
それぞれ詳しく見ていきましょう。
外貨預金
外貨預金は、米ドルやユーロなどの外国通貨で預金をおこなう資産運用です。円安が続き円の価値が低くなれば、相対的に見れば資産は目減りしている状況になります。資産の一部を外貨に換えれば、円安のリスクを分散させられるため、老後の資産の価値が安定しやすくなるでしょう。
円安の方向に為替レートが変動すれば、外貨を円に換えた際に利益が出る場合があります。一方で、円高で外貨を円に換えると損をすることも。また、通貨によっては円預金よりも金利が高く設定されている場合があるため、利息収入が期待できる場合もあります。為替リスクを理解したうえで、長期的な視点で通貨の分散を考えることが求められるでしょう。
個人向け国債
個人向け国債は、国が発行する個人投資家向けの債券です。発行元が日本国であることから信用度が高く、資産の安定性を重視したい場合に向いています。1万円単位で購入できるため、投資額を柔軟に決められるでしょう。
個人向け国債には種類があり、金利が固定されるタイプと金利が変動するタイプがあります。発行後1年を経過したタイミングであれば中途換金も可能であり、利回りは減少しますが、元本割れは発生しません。安全性が高いため老後の資産運用に適しており、定期預金よりも高い利率を期待したい方に向いています。
投資信託
投資信託は、投資家から集めた資金をまとめて運用会社が株式や債券などに分散投資する金融商品です。1つの商品で複数の資産に投資できるため、個人で銘柄を選ぶよりも分散投資をおこないやすくなります。
ただし、投資信託は元本割れのリスクがある点に注意が必要です。老後の資産運用で株式の投資信託に投資する場合、保有状況によっては資産を大きく減らしてしまう可能性も。債券を投資対象とする投資信託は、株式と比較して値動きが緩やかになりやすいです。リスクを考えたうえで、安定を重視したポートフォリオを構築する必要があるでしょう。
純金積み立て
純金積み立ては、毎月一定額の金を購入して積み立てる資産運用の方法です。金は世界共通で安定した価値を持つ資産とされており、株式などの金融資産とは値動きが異なる傾向にあります。株式の投資信託を保有する場合、資産の分散を考えるうえで重要な投資対象です。
金も価格が変動するため、元本割れのリスクがあります。純金積み立ては価格が変動するなかで、定期的に購入して価格を平均化できるため、価格変動のリスクを軽減できるでしょう。金は資産の一部として、分散投資をおこなうために選ばれることが多い投資対象です。
アンティークコイン
アンティークコイン投資は、歴史的な価値を持つ希少性の高いコインに投資する近年注目されている資産運用の方法です。金と同様に株式や債券などの伝統的な金融資産とは異なる値動きをするため、富裕層を中心に投資先に選ばれることがあります。
アンティークコインは新たに増えることがないため、希少性の観点から長期的な価値の上昇が期待されます。発行枚数が少なく、希少性の高いコインはコレクター需要があるため、市場では高く評価されるでしょう。
ただし、アンティークコインは価値の判断が難しく、真贋の見極めも重要です。老後の資産運用に取り入れる場合は、信頼できる専門店を利用し、慎重に検討しましょう。
老後のお金を守るために必要なこと

老後のお金を守るために必要なことは以下のとおりです。
- 生活費を見直して節約する
- インフレ対策として預貯金だけに偏らない
- 詐欺や勧誘に注意する
それぞれ詳しく解説します。
生活費を見直して節約する
老後のお金を守るためには、資産運用だけでなく生活費を見直すことも重要です。生活費を見直して支出を抑えれば、資産を取り崩すペースを緩やかにできます。
生活費の見直しには家計簿を付けることが有効であり、支出の内容を整理して把握すれば、無理のない範囲で節約できる項目がわかります。優先的に見直す項目は固定費であり、一度見直すだけでも長期的に支出を抑えやすくなるでしょう。老後のお金を長く守るためには、資産運用で増やすだけでなく、不要な生活費を減らす必要があります。
インフレ対策として預貯金だけに偏らない
老後の資産運用はやり方次第では危険といわれることもありますが、すべての資産を預貯金だけで保有する状態も避けたいところです。預貯金は安全性が高い一方で、物価が上昇するインフレの局面ではお金の実質的な価値が目減りする可能性があります。
物価が上昇している状態で預金の金利が低いままの場合、同じ金額の預金を将来に持ち越しても買えるものが少なくなることも。長期的に預貯金を続けるほどインフレのリスクが高まるため、資産の適切な分散を考えることが重要です。
老後の資産運用では、生活費の3カ月~6カ月に相当する生活防衛資金を預貯金で確保します。そのうえで、資産の一部を投資信託、金、アンティークコインなどに分散して保有すれば、インフレの影響を抑えやすくなるため、お金を守ることにつながるでしょう。
詐欺や勧誘に注意する
高齢者はまとまった資産を保有している場合が多く、投資詐欺や悪質な勧誘の対象になりやすい傾向があります。老後のお金を守るためには、詐欺や強引な勧誘を受ける可能性があることを意識して自衛する必要があるでしょう。
「契約できるのは今だけ」「この機会を逃したら次はない」などの契約を急かす発言があった場合は、実態が不透明な投資案件や詐欺の可能性が高いです。話を聞いてもその場で契約せず、家族や専門家などに相談しましょう。大切なことはその場で契約しないことであり、一度冷静になって第三者の意見を聞けば、見抜ける可能性が高まります。
自分にとって都合がよすぎる話ほど、慎重に判断する姿勢を持つことが重要になります。自身がターゲットにされやすい自覚を持ったうえで対応するようにしましょう。
まとめ
老後の資産運用では、資産を大きく増やすことよりも、お金を守りながら長く活用する考え方が重要です。退職金の一括投資や生活費を投資に回す行動などは、老後の生活資金を大きく減らす可能性があるため、避けるようにしましょう。
お金を守るために必要な知識を身につけたうえで、リスクを管理しながら資産運用をおこなうことが重要です。老後の資産運用は、現役世代の資産運用と比較して出口戦略を明確に意識する必要があります。
特に、資産の寿命を意識した無理のない取り崩しのペースを把握するには、専門家への相談が欠かせません。当社では、老後の資産運用に関する総合的な相談内容に対応しています。お気軽にご相談ください。

