投資初心者におすすめされることが多い積立投資には、デメリットがあるのか気になる方もいることでしょう。はじめに、積立投資は万能な投資方法ではありません。
絶対に損をしないという保証はなく、場合によっては一括投資のほうが高い成果を上げられることもあります。初心者に推奨されることを理由に、十分な理解なしに始めると失敗する可能性があります。
本記事では、積立投資に失敗する理由を中心に紹介します。デメリットを理解し、メリットと成功するためのポイントを押さえれば、より安定した方法で積立投資に取り組めることでしょう。積立投資におすすめの資産運用も紹介するため、適した投資対象もわかるようになります。
積立投資とは

積立投資は、一定の金額を定期的に同じ金融商品に出資する投資方法です。まとまった資金を一度に投じる一括投資とは異なり、資金を細かく分けて長期間にわたり投資をおこないます。まずは、積立投資の基礎知識を確認していきましょう。
長期投資に適した投資手法
長期投資は、一般的には10年以上、理想としては数十年以上にわたって資産を保有し続ける投資スタイルです。積立投資も投資するタイミングを細かく分けて、長い期間にわたって投資を続けます。よって、長期投資と組み合わせるのに適した投資手法になります。
長期投資は短期的な市場の変動に運用成果が左右されにくいことがメリットです。ただし、投資手法が一括投資である場合、高値づかみをすると、その後の下落リスクが大きくなり、最終的なリターンに影響を与えることも。
積立投資は、一定の金額を定期的に投資するため、購入価格が平均化されやすく、高値で購入するリスクを軽減できます。よって、長期投資の運用成果がより安定しやすくなるでしょう。積立投資は長期投資に適した投資手法であり、あわせて説明されることが多いです。
ドルコスト平均法について
積立投資が優れているといわれる理由は、豊富な資産運用の経験を持つ多くの人たちが推奨するドルコスト平均法という手法にあります。これは、一定金額を定期的に投資して購入単価を平均化すれば、投資リスクの分散につながるという考え方です。ドルコスト平均法が優れている理由は、価格が高い時には少ない数量を、価格が安い時には多い数量を自動的に購入できることでしょう。
例えば、1口5,000円の投資信託があり、毎月1万円分を購入する場合、購入できる口数は2口です。投資信託の価格が上昇して1万円になった場合は、購入できる口数は1口になります。反対に価格が下落して1口あたりの価格が2,500円になれば、1万円で4口購入可能です。
高値でも安値でも購入することで、平均取得単価は自動的に調整されます。ドルコスト平均法の手法をもとに積立投資を続ければ、購入単価が安定しやすくなります。
初心者に推奨される理由
積立投資が投資初心者に推奨される理由は以下の3つが挙げられます。
- 少額から始められる
- 手間がかからない
- 学びながら経験を積める
一括投資はまとまった資金を用意する必要がありますが、積立投資は少額から始められます。初めて挑戦する人も最初の一歩を踏み出しやすく、心理的な障壁が低いことから初心者におすすめです。
積立投資は一定金額を定期的に投資する手法であることから、市場の値動きを頻繁にチェックする必要がないため、手間がかかりません。自動積立を利用すれば、購入の手間も省けるでしょう。投資に熱心ではなく、本業が忙しい人も無理なく始められます。
さらに、投資を学びながら経験を積めることもメリットです。投資を本格的に始めたい方にとって、積立投資は実際に投資をしながら相場の動きを学べるいい機会になります。少額投資であれば、大きな金額を失うリスクは低いため、学びながらより自分に合った投資方法を見つけられるかもしれません。以上の理由から、積立投資は投資初心者におすすめされます。
積立投資のデメリット

積立投資の基礎知識を理解したうえで、考えられるデメリットを紹介します。
- 市場が下落を続けると評価額も減り続ける
- 相場によっては一括投資よりも効果が低くなる
- まとまった資産を形成するのに時間がかる
- 含み益だけでなくコストも積み上がる
- 投資スタイルによっては適さないことがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
市場が下落を続けると評価額も減り続ける
積立投資は、価格が高いときにも低いときにも定額ずつ買い続けることから、購入単価を平均化しやすくなると説明しました。しかし、市場全体が長期間にわたって下落を続けた場合、購入単価は下がり続け、評価額も減少します。市場が下落を続ける限り、損失が増加するでしょう。
市場の下落が長期化して、資産の評価額が減り続ければ、いつ損失を解消できるのかという不安が強まります。評価額が下がったままの状態が続けば、積立をやめたほうがいいのではないかという考えに至るかもしれません。
再び市場が上昇するタイミングに備えて、損失を抱えたまま投資を続けなければ、積立投資で成果を出すことはできません。市場の動きは予測が困難であるため、将来の値動きは誰にもわからないことから、局面によっては投資を続けるハードルが高くなります。
相場によっては一括投資よりも効果が低くなる
ドルコスト平均法は多くの場合、長期投資において一括投資よりも優れた投資手法といわれています。しかし、市場全体が長期間にわたって下落することなく上昇を続けた場合、一括投資のほうがトータルリターンは高くなることも。価格が上昇に転じる前の安値など、優れたタイミングの一括投資のほうがリターンは大きくなりやすいです。
積立投資は長期投資に適した投資方法です。短期投資の場合は、投資機会を分散させるよりも、短期的な大きな値動きが期待できるタイミングに一括投資をするほうが高いリターンが期待できます。よって、相場や投資スタイルによっては積立投資が必ずしも適さず、リターンが大きくなるわけではありません。
まとまった資産を形成するのに時間がかる
積立投資は毎月一定額を投じ続けることで、少額から始めても、長期的に大きな資産を形成できます。しかし、まとまった資産を築くためには相応の期間が必要です。
例えば、年間5%の利回りが期待できる投資対象に毎月3万円を積み立てると仮定して、1,000万円の資産を形成するのにかかる時間を運用の経過を含めて以下にまとめました。
年数 | 積立の元金 | 形成された資産 | 利益 |
---|---|---|---|
1年目 | 36万円 | 36万9,777円 | 9,777円 |
5年目 | 180万円 | 204万236円 | 24万236円 |
10年目 | 360万円 | 461万9,641円 | 101万9,641円 |
15年目 | 540万円 | 785万4,531円 | 245万4,531円 |
18年目 | 648万円 | 1,016万7,740円 | 368万7,740円 |
1,000万円の資産を形成するのにかかる時間は約18年となりました。積立投資は、まとまった資産を形成するのに長い時間を要します。目標額がある場合は、過去の運用データから期待できる利回りから計算して毎月いくら積み立てるべきか考える必要があります。ただし、毎月の投資額が少ないほど、まとまった資産の形成に時間がかかるでしょう。
含み益だけでなくコストも積み上がる
積立投資では投資を続けるにあたって、手数料が発生する場合があります。例えば、投資信託の信託報酬が代表的であり、毎年一定の年率でコストがかかる仕組みです。手数料がかかる投資対象に積立投資をおこなうと、年々コストも積み上がります。
年単位では小さなコストであっても、10年、20年と長期で投資を続ければ、手数料の総額は無視できない大きさになるでしょう。たとえ、購入手数料が無料であっても、保有中にずっとかかる信託報酬のようなコストがあるため、トータルでかかる費用を意識することが重要。投資対象を選ぶ場合は、類似する商品と比較して、できる限りコストの低い商品を選ぶことが最終的なリターンを大きくする秘訣です。
投資スタイルによっては適さないことがある
積立投資は、投資対象の長期的な成長を前提に安定して資産を形成する手法です。そのため、すべての投資スタイルや目的に向いているわけではありません。例えば、短期的な価格の値幅を狙って一括投資をする短期投資には積立投資は適さないでしょう。
積立投資は初心者に推奨される投資手法であることから、デメリットがないように語られることがありますが、けっして万能は投資方法ではありません。適した方法でおこなわなければ、必ずしも成果を出せるとは限らないでしょう。
積立投資に失敗する理由

積立投資に失敗する理由は大きく分けて3つあります。
- 心理的な要因から売却してしまう
- 積立金額の設定が高額
- 投資対象の選び方が間違っている
それぞれ詳しく解説します。
心理的な要因から途中売却してしまう
積立投資は、継続して安定した運用成果を期待できる投資方法です。適した投資対象を選び、機械的に投資を続けるのであれば、基本的に失敗することはないでしょう。しかし、投資をおこなうのは感情を持つ人間です。相場の上下に一喜一憂し、焦って資産を売却してしまうケースも少なくありません。
人間の心理はリスクのある状況下では、利益を得るよりも損失を過剰に回避する傾向にあります。例えば、1万円の得をした場合と1万円の損をした場合では、1万円の得をした喜びよりも1万円の損をした場合の苦痛やストレスのほうが強く感じやすいといわれています。
そのため、損失が発生してから価格が上昇し、含み益に変わったタイミングでは、また下落して損失を被りたくないという心理が働き、売却してしまう人もいることでしょう。
積立投資は日々の値動きをチェックする必要はないため、価格変動を見て不安になる場合は、できる限り確認する頻度を落とすことで心理的な不安を取り除くようにしましょう。
積立金額の設定が高額
積立投資が失敗する理由には、積立を続けられなくなることも含まれます。積立金額を高くしすぎると、資金に余裕がなくなり、さまざまな不利益が発生する可能性があります。
具体的には、目標額を早く達成したいと考えて、月々の積立金額を家計の余裕を超える高額に設定してしまうケースです。結果的には、生活費のやりくりが苦しくなり、家計が圧迫されることも。資金が尽きれば積立自体を継続できません。
また、積立金額の設定を高くすれば、将来に必要な支出への予算が捻出できなくなります。場合によっては、積立投資のために人生を我慢している状況になることも。ストレスが溜まればやめたいという気持ちが強まるため、長続きしないでしょう。
積立投資は継続して投資できる額に設定することが重要です。少額からでも問題ないため、無理なく投資できる金額に設定しましょう。
投資対象の選び方が間違っている
積立投資は、長期的な成長やリターンを期待できる投資先でなければ成果は得られません。将来性がなくリターンを期待できない投資先を選べば失敗する可能性が高くなります。
例えば、個別株や暗号資産(仮想通貨)は、短期的には大きなリターンを期待できる投資対象が多く存在しますが、数十年先も長期的な成長を期待できるとは限りません。積立投資に適していない投資先を選べば、安定したリターンを得ることは難しいでしょう。
投資対象の選び方を間違えた際のリスクには、時間を大きく無駄にしてしまうことも挙げられます。投資をおこなって20年経ってから失敗であると判断したときには、お金と時間を大きく失っている状況にあります。再び別の投資対象に積立投資しようと考えても、失った時間で得られたリターンは計り知れません。
積立投資のメリット

ここまで積立投資のデメリットと失敗する理由を解説しましたが、積立投資はやり方を間違えなければ優れた投資であることに変わりありません。積立投資のメリットを簡単に確認していきましょう。
- 少額から始められる
- 購入タイミングを考える必要がない
- 自動化すれば手間を減らせる
それぞれ詳しく解説します。
少額から始められる
積立投資は、少額から始められるため、まとまった資金がなくても投資をスタートできます。家計の余裕に合わせて金額を調整できるため、投資経験が浅い人でもリスクを抑えながら資産形成をおこなうことが可能です。
購入タイミングを考える必要がない
積立投資では、定期的に同じ金額を投資し続けるため、市場の上げ下げを見きわめて最適な買い場を探す手間が不要です。例えば、毎月の頻度で購入日を1日に決めたのであれば、毎月1日に決まった額を投資し続ければ問題ありません。購入タイミングを考えることなく、ドルコスト平均法により購入価格が自動的に最適化されていきます。
自動化すれば手間を減らせる
積立投資の代表的な投資先である投資信託は、証券会社や銀行の自動積立サービスを利用すると、設定した日に自動で引き落として購入も可能です。口座残高に気を付けていれば、都度注文を出さなくても投資を続けられるため、忙しい人でも手間なく継続できます。
積立投資におすすめの資産運用

積立投資のメリット・デメリットを踏まえて、おすすめの資産運用を3つ紹介します。
- 投資信託
- 生命保険
- 海外積立投資(オフショア投資)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
投資信託
投資信託は、多数の投資家から集めた資金を運用のプロであるファンドマネージャーがまとめて株式や債券、不動産などに投じ、その運用成果を投資家に還元する投資商品です。少額から幅広く分散投資しやすいため、代表的な積立投資の投資先になります。
投資信託の最低投資金額は商品にもよりますが100円です。ご自身の予算にあわせて積立金額を適切に設定できるでしょう。証券会社や銀行で自動積立に対応しているため、手間なく積立を続けられます。
ただし、投資信託にはさまざまな種類があり、なかにはブルベアファンドのように短期投資に適した商品も。特に対面で相談できないネット証券で口座を開設すると、投資商品の選択で助言を受けにくいです。投資信託は、気軽に購入しやすい反面、知識がなければ適した商品を選びにくいことに注意が必要です。
生命保険
貯蓄型の生命保険は、保険機能と資産運用機能をあわせ持つ商品です。保険料を積み立てることで、満期時には所定の年率で保険金が受け取れます。万が一の際には保障を受けられることがほかの投資商品にはない魅力といえるでしょう。
保険料の積立は口座から自動振替で支払えるため、継続するための手間はほとんどありません。また、支払った保険料は申告することで税金の控除を受けられます。
投資信託と比較して元本割れのリスクは低いです。しかし、高額に設定した保険料を支払えずに、解約する場合は解約返戻金が元本割れするリスクがあります。安定した方法で積立投資をおこないたい方に向いているでしょう。
海外積立投資(オフショア投資)
海外積立投資(オフショア投資)は、日本の証券会社では投資できない世界の魅力的な投資商品に積み立てる方法です。期待できる利回りの高い商品から、多種多様なアセットに分散投資できます。
日本円だけでなく、米ドルやユーロなどの外貨に資産を分散させることも重要であり、為替リスクを含めた分散投資がしやすいことがメリットです。毎月、口座引落・クレジットカードから簡単に投資を継続できます。
海外積立投資はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)に銘柄の選定を任せれば、自動的に複数のアセットに効率的に分散したポートフォリオを組めます。自身で国内の投資信託を選定するよりも投資対象を最適化しやすいでしょう。ただし、日本では情報を得ることが難しい商品です。
当社では海外積立投資に適した複数の海外投資商品を紹介しているため、日本では情報を得ることが難しい魅力的な投資対象への投資を相談できます。
積立投資で成功するためのポイント

最後に、積立投資で成功するためのポイントをまとめました。
- 投資期間は10年以上に設定する
- アセット分散を心がける
- NISA・iDeCoなどの適した制度を利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
投資期間は10年以上に設定する
積立投資で安定した成果を出すためには時間が必要です。投資期間が短期であるほど、評価額は上下に大きく振れることが多くなります。特にリーマンショックやコロナショックのような世界的な大暴落に巻き込まれれば、損益が下振れる原因になるでしょう。
しかし、長期であれば、世界の経済成長や企業の利益成長が資産価値を押し上げるため、時間をかけるほど成功確率が高まります。そのため、投資期間は最低でも10年以上に設定することをおすすめします。
アセット分散を心がける
アセット分散とは、株式・債券・不動産・コモディティ(ゴールド・原油・穀物)など異なる資産に投資を分散させることです。積立投資で成功するには、リスクとリターンのバランスが取れたポートフォリオが重要になります。
例えば、積立投資をおこなうにあたって、株式の投資信託のみに投資をする人もいます。複数の個別株への分散はできていても、アセットは株式に一極集中であるため、リスクの高いポートフォリオです。債券・不動産、ゴールドなどのコモディティにも分散投資することで、市場で想定されるさまざまな局面に対応しやすくなります。
また、資産は日本だけでなく、海外の投資商品も保有する為替分散が重要です。日本円の価値が下がり、外貨の価値が上がる円安の状態に対して備えることができます。
NISA・iDeCoなどの適した制度を利用する
NISA・iDeCoは投資で得た利益を非課税にできる税制優遇制度です。どちらの税制優遇制度も積立投資に適した制度といえるでしょう。
NISAにはつみたて投資枠があり、年間120万円、最大1,800万円の投資額にかかる税金が恒久的に非課税です。NISAを利用すれば、毎月10万円までの積立金額で積立投資を実践し、本来利益にかかる20.315%の税金を節約できます。
iDeCoは老後の年金を作る制度であり、毎月一定額を掛金として拠出して、投資信託などの投資対象に積み立てる仕組みです。掛金は所得控除の対象になるため、さらなる税制優遇を受けられます。運用成果は60歳以降に引き出し可能になるため、最低でも60歳まで積み立てる前提になります。
iDeCo | NISA ※つみたて投資枠 | |
---|---|---|
対象者 | 原則20歳以上65歳未満 (公的年金被保険者) | 18歳以上 |
拠出限度額 | 年間 24~81.6万円 | 年間 120万円 |
非課税保有限度額 1,800万円 | ||
投資可能商品 | 投資信託、保険商品、定期預金等 | 長期の積立・分散投資に適した 一定の投資信託 |
購入方法 | 定期的・継続的に積み立てる | 定期的・継続的に積み立てる |
受け取り | 原則60歳以降に受け取り | 引き出し可能 |
積立投資をおこなうなら、投資の目的にあわせてNISA・iDeCoなどの非課税制度の利用することで、税金を節約して利益を最大化できるでしょう。
まとめ
積立投資は少額からはじめやすく、ドルコスト平均法で購入単価を平均化できるため、長期的な資産形成に向いています。しかし、市場が下落を続ける局面や、一括投資に適した相場では成果が伸びにくく、まとまった資産を築くには時間がかかるかもしれません。
心理的な不安による途中売却や、積立を継続できなくなることで失敗するリスクもあります。成功させるには、運用の途中で不安にならないように確固たる自信をもって投資を継続することです。
そのため、積立投資で安定して成果を出すための仕組みと方法を理解する必要があります。積立投資に対して不安がある方や、適した投資対象が知りたい方は当社にご相談ください。一般的な資産運用のアドバイスから、日本では情報が少ない海外投資商品を含む魅力的な投資先を紹介可能です。