2026年4月、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、AIを悪用したオンライン投資詐欺への対策を強化していると公表しました。
ASICによれば、2025年1月1日から12月31日までの1年間で、同機関が削除調整したフィッシングサイトおよび投資詐欺サイトは11,964件に達しました。これは前年の6,270件から90%増加した数字であり、1日あたり平均32件、週あたり約230件の詐欺サイトが削除された計算になります。
本記事では、AIやSNS広告を利用した海外の投資詐欺の実態と、日本の投資家が注意すべきポイントを解説します。
AIによって投資詐欺の「見た目の信用力」大きく上昇
AI技術そのものが違法なわけではありません。AIは、金融機関の不正検知、投資情報の整理、マーケット分析、顧客対応の効率化など、正当な金融サービスでも広く利用されています。
問題は、詐欺グループがAI技術を悪用し、投資詐欺の「見た目の信用力」を大きく高めていることです。
従来の詐欺広告は、日本語が不自然だったり、サイトの作りが粗かったりするケースも少なくありませんでした。しかし、生成AIの普及により、詐欺グループは短時間で、より本物らしい広告やコンテンツを作れるようになっています。
たとえば、以下のようなものです。
- 著名人が投資を勧めているように見える偽動画
- 実在する報道機関に似せた偽ニュース記事
- 金融機関や証券会社に見える偽サイト
- 本物の担当者のように見えるチャット対応
- 投資利益が出ているように見せる偽の取引画面
- SNSなどへ誘導する自然な広告文
このように、AIを使った投資詐欺では、広告、動画、記事、アプリ画面、チャット対応までが本物らしく作り込まれるため、利用者が詐欺だと気づきにくくなっています。
日本でも同様の傾向が見られることから、金融庁は、投資詐欺が疑われる広告等の情報受付窓口を設置しています。
AI投資詐欺スキームの手法と実態
著名人・専門家を装ったSNS広告で集客する
最初の接点は、Instagram、Facebook、YouTube、X、TikTokなどの広告であることが多くあります。
広告では、経済評論家、実業家、投資家、芸能人、アナウンサーなどの画像や動画が無断で使われ、あたかも本人が特定の投資サービスを推奨しているように見せかけます。
警察庁の2025年暫定値でも、SNS型投資詐欺では、当初の接触手段としてバナー等広告が3,760件、ダイレクトメッセージが3,576件確認されており、この2つで全体の約8割を占めています。

偽ニュース記事や偽の比較サイトへ誘導する
広告をクリックすると、実在するニュースサイトに似せたページや、「AI投資で成功した人物の体験談」のような記事に誘導されます。
この段階では、投資商品そのものを売り込むというより、読者に「有名人も使っている」「大手メディアで紹介された」「今だけ参加できる」と思わせることが目的です。
特に注意すべき表現は、次のようなものです。
- 「AIが自動で売買」
- 「初心者でも毎日利益」
- 「元本保証」
- 「損失リスクなし」
- 「有名人も利用」
- 「期間限定で無料招待」
投資において、元本保証や確実な利益をうたう勧誘は注意が必要です。
LINEグループや専用アプリに誘導する
次に、LINE、WhatsApp、Telegramなどのグループへ誘導されます。
グループ内では、先生役、アシスタント役、利益報告をする参加者役など、複数のアカウントが登場します。実際には、これらが詐欺グループによる自作自演であるケースがあります。
ここで参加した人は、「他の参加者が儲かっているように見える」「先生やアシスタントは信用できる」「早く始めないと機会を逃す」といった心理状態に追い込まれる傾向があります。
偽の取引画面で利益を演出する
参加者が入金すると、偽の投資アプリやWeb上の管理画面に利益が表示されます。
しかし、その利益は実際の市場取引によるものではなく、詐欺グループが画面上で数字を操作しているだけの可能性があります。
その後、出金しようとすると、次のような名目で追加送金を求められたという声もあります。
- 税金
- 保証金
- 手数料
- 凍結解除費用
- 本人確認費用
- マネーロンダリング審査費用
- 出金審査費用
なお、この段階で追加送金しても、資金が戻る可能性は極めて低いと考えるべきです。
海外当局が警戒を強めている理由
ASICは、詐欺グループがAIを使って、より説得力のある広告やコンテンツを作成している点に警戒を強めています。2025年だけで、ASICは11,964件のフィッシング・投資詐欺サイトを削除し、2023年の削除サービス開始以降では25,000件超の詐欺サイトを削除しています。
また、米FBIも2025年のInternet Crime Reportに関連して、暗号資産やAI関連の詐欺が高額被害の中心になっていると公表しています。FBIによれば、2025年のサイバー関連犯罪による米国の被害額は約210億ドルに上り、暗号資産投資詐欺の報告損失は72億ドル超とされています。
つまり、これは一国だけの問題ではなく、SNS広告、AI生成コンテンツ、暗号資産送金、海外拠点の詐欺グループが結びついた国際的な犯罪類型になっているということです。
日本の投資家が特に注意すべきポイント
日本国内でも、SNS型投資詐欺の被害は深刻です。
警察庁の2025年暫定値では、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は約1,274.7億円でした。前年と比べ、認知件数は48.7%増、被害額は46.3%増となっています。
また、消費者庁も、SNSを通じた投資や副業などの「もうけ話」に注意を呼びかけています。特に、著名人・有名人のなりすましと考えられる事例が増えており、投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合は詐欺だとして、振り込まないよう注意喚起しています。
無登録業者・偽サイトから身を守るために
SNS広告やDMで投資話を持ちかけられた場合は、次の点を必ず確認してください。
金融庁の登録業者か確認する
日本居住者に対して金融商品の勧誘、媒介、助言、運用などを行う場合、原則として金融商品取引業の登録が必要です。金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」では、金融庁から登録等を受けている金融事業者を検索できます。
無登録業者リストも確認する
金融庁は、無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書を発出した業者名も公表しています。
ただし、掲載されていない業者でも無登録営業に該当する行為を行っている可能性があるため、リストにないことだけで安全とはいえません。
個人口座への振込はしない
消費者庁は、投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺だと明確に注意喚起しています。
「先生の指定口座」「アシスタントの口座」「税金支払い用口座」「一時保証金口座」などの名目であっても、個人口座に投資資金を振り込んではいけません。
出金前の追加送金には応じない
出金しようとした際に、税金、保証金、手数料、凍結解除費用などを求められた場合は、詐欺の可能性が極めて高いです。
正規の金融機関や証券会社であれば、出金のために別口座へ追加送金を求めるような運用は通常ありません。
被害回復をうたう二次被害にも注意する
一度被害に遭うと、「資金を取り戻せる」「弁護士と連携している」「暗号資産を追跡できる」などと称する二次被害に狙われることがあります。消費者庁も、被害回復をうたった二次被害に注意するよう呼びかけています。
AI時代の投資詐欺は「本物らしさ」が最大の武器
AIやSNS広告を利用した投資詐欺は、従来の詐欺よりも見た目が巧妙です。
有名人の動画がある、ニュース記事のように見える、アプリ画面で利益が表示される、LINEグループで他の参加者が儲かっているように見える。こうした要素が重なることで、多くの人が本物だと信じてしまいます。
「必ず儲かる」
「元本保証」
「有名人も使っている」
「今だけ参加できる」
「出金には追加費用が必要」
このような言葉が出てきた場合は、すぐに入金せず、金融庁の登録業者検索、無登録業者リスト、消費生活センター、警察相談窓口などで確認することが重要です。
AI時代の投資詐欺から資産を守るためには、広告の見た目ではなく、登録の有無、運営会社の実体、入金先、出金条件、勧誘経路を冷静に確認することをより意識していただければと思います。
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AIやSNS広告を悪用した投資詐欺は、年々巧妙化しています。迷った時に、まず信頼できる窓口に相談することが助けになるはずです。
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