近年、SNSやマッチングアプリを通じて親密な関係を築き、最終的に暗号資産投資へ誘導する詐欺が世界的に問題となっています。
海外ではこの手口を「pig butchering」と呼ぶことがあります。直訳すると「豚の屠殺」という強い表現になりますが、これは、犯人が被害者と時間をかけて関係を築き、信頼させ、投資額を増やさせたうえで、最後に資金を奪い取る様子を表した言葉です。
日本では、「ロマンス投資詐欺」「SNS型投資・ロマンス詐欺」「長期信頼構築型の暗号資産詐欺」などと表現されます。
米FBIも、暗号資産投資詐欺の代表的な手口としてこの種の詐欺に注意を呼びかけており、オンライン上で関係を築いた相手から、偽の暗号資産投資に誘導されるケースがあると説明しています。
本記事では、海外当局が警戒を強めているロマンス投資詐欺の最新動向と、日本の投資家が注意すべきポイントを解説します。
ロマンス投資詐欺とは
ロマンス投資詐欺とは、SNSやマッチングアプリ、メッセージアプリなどで知り合った相手が、恋愛感情や友情、信頼関係を利用して、偽の投資話に誘導する詐欺です。
これら詐欺集団は、最初から投資の話を持ちかけるとは限りません。むしろ、最初は日常会話、趣味、仕事、将来の夢、家族の話などから始まり、時間をかけて距離を縮めていくケースが多くあります。
その後、ある程度の信頼関係ができた段階で、次のような話を持ちかけられます。
- 暗号資産で安定して利益を出している
- 親族や知人が取引所の内部情報を持っている
- 自分が使っている投資アプリなら初心者でも利益が出る
- 少額から試せるので安心
- 将来の生活資金を一緒に作りたい
- 特別な取引枠に招待できる
このような言葉で、被害者は偽の取引サイトや偽アプリに登録するよう誘導されます。
「恋愛」だけでなく「信頼」が狙われる
この詐欺は「ロマンス詐欺」と呼ばれることがありますが、必ずしも恋愛関係だけを装うわけではありません。
詐欺集団は、まず「この人は信頼できる」と思わせることを目的に、被害者の状況に合わせて、恋愛相手、投資仲間、親切な友人、海外在住のビジネスパーソン、成功している投資家など、さまざまな人物像を演じます。
そのため、やり取りは数日で終わるとは限らず、数週間から数カ月にわたることもあります。毎日のようにメッセージを送り、悩みを聞き、将来の話をし、被害者に「自分のことを本当に考えてくれている」と感じさせます。
この信頼関係ができたあとに投資話を持ち出すため、被害者は通常の広告や営業よりも警戒心を下げてしまいやすくなります。
なぜ暗号資産が使われやすいのか
ロマンス投資詐欺では、暗号資産が送金手段として使われるケースが目立ちます。その理由として、次のような点が挙げられます。
- 国境を越えて送金しやすい
- 送金後の取消しが難しい
- ウォレットアドレスだけで資金を移動できる
- 海外の取引所や偽サイトに誘導しやすい
- 被害者が仕組みを十分に理解しないまま送金してしまう
詐欺集団は、被害者に対して、まず国内外の暗号資産取引所で暗号資産を購入させ、その後、指定したウォレットアドレスや偽の投資プラットフォームへ送金するよう指示します。
被害者の画面上では、利益が出ているように表示されることがあります。しかし、実際には市場で運用されているわけではなく、詐欺集団が管理する偽サイト上で数字を見せているだけの可能性があります。
少額の出金で信用させるケースもある
この手口で特に注意すべきなのが、最初に少額の出金を認めるケースです。
たとえば、被害者が数万円から数十万円を入金すると、画面上では利益が増えているように表示されます。そして、試しに出金を申し込むと、実際に少額だけ戻ってくることがあります。
これにより、被害者は「本当に出金できる」「この投資は本物だ」と信じてしまいます。
しかし、これはより大きな資金を入金させるための演出である可能性があります。
その後、詐欺集団は次のような言葉で追加投資を促します。
- 今が一番利益を出せるタイミング
- もっと大きく入れれば特別枠に参加できる
- あと少しで目標金額に届く
- 二人の将来のために増やそう
- 期間限定のチャンスなので急いだ方がいい
一度でも出金できた経験があると、被害者は警戒しにくくなります。その心理を利用して、送金額を少しずつ大きくしていくのが、この詐欺の特徴です。
出金時に「税金」「保証金」「手数料」を求められたら危険
被害者がまとまった利益を出金しようとすると、突然、出金できなくなることがあります。その際、詐欺集団は次のような名目で追加送金を求めます。
- 税金
- 保証金
- 出勤手数料
- 凍結解除費用
- 本人確認費用
- マネーロンダリング審査費用
- 信用スコア回復費用
ここで重要なのは、これらを支払っても資金が戻る保証はないということです。むしろ、追加送金に応じるほど、さらに別の名目で請求されるおそれがあります。
国民生活センターにも、マッチングアプリで知り合った相手から暗号資産の運用を勧められ、利益が出ているように表示された後、出金しようとすると税金などの名目で追加費用を求められたという相談事例が掲載されています。
正規の金融機関や暗号資産交換業者であれば、出金のために別口座や外部ウォレットへ高額な追加送金を求めるような運用は通常ありません。
「出金するには先に税金を払う必要がある」「口座凍結を解除するために保証金が必要」と言われた場合は、詐欺を疑うべきです。
海外では詐欺拠点そのものへの対策が進んでいる
この種の暗号資産投資詐欺は、個人の単独犯ではなく、海外の組織的な詐欺グループによって行われているケースがあります。
米司法省は、東南アジアの詐欺拠点を対象にした「Scam Center Strike Force」の取り組みを発表しており、暗号資産投資詐欺を、世界的に大きな被害を生んでいるサイバー犯罪の一つとして位置づけています。

また、こうした詐欺拠点では、詐欺を実行する側の人間も、虚偽の求人などで集められ、強制的に詐欺行為に従事させられている可能性が指摘されています。
つまり、ロマンス投資詐欺は、単なる個人間のだまし合いではなく、国境を越えた組織犯罪、人身取引、マネーロンダリングとも結びつく深刻な問題になっています。
日本でもSNS型投資・ロマンス詐欺の被害が拡大
日本国内でも、SNS型投資詐欺やSNS型ロマンス詐欺の被害は拡大しています。
警察庁が公表した2025年暫定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は約1,274.7億円でした。また、SNS型ロマンス詐欺の認知件数は5,604件、被害額は約552.2億円とされています。

特にSNS型ロマンス詐欺では、暗号資産を送信させる手口による被害が目立っており、SNSやマッチングアプリで知り合った相手からLINEなどに誘導され、暗号資産投資を勧められ、指定されたアドレスへ送金してしまうケースが確認されています。
「恋愛感情を抱かせる」「将来の生活資金にしようと言う」「投資アプリをダウンロードさせる」「利益が出ているように見せる」「出金時に税金や手数料を求める」といった流れは、海外で問題となっているロマンス投資詐欺と共通しています。
被害に遭わないための確認ポイント
SNSやマッチングアプリで知り合った相手から投資を勧められた場合は、次の点を必ず確認してください。
会ったことがない相手からの投資話は信用しない
長くやり取りしている相手であっても、実際に本人確認できていない相手からの投資話には注意が必要です。写真、ビデオ通話、身分証の画像などは偽造されている可能性があります。
「親切だから」「毎日連絡してくれるから」「将来の話をしているから」という理由だけで、投資資金を送ってはいけません。
指定された投資アプリやサイトを使わない
相手から送られたURL、紹介コード、専用アプリ、海外取引所をそのまま使うのは危険です。偽サイトや偽アプリである可能性があります。アプリストアに表示されているからといって、安全とは限りません。
暗号資産を指定アドレスへ送らない
暗号資産は、一度送金すると取り戻すことが非常に難しい場合があります。
相手から指定されたウォレットアドレスに送金する前に、本当に正規のサービスなのか、金融庁に登録された暗号資産交換業者なのかを確認することが重要です。
出金前の追加請求には応じない
税金、保証金、手数料、凍結解除費用などを求められた場合は、追加送金しないでください。
「払えば出金できる」と言われても、さらに別の名目で請求される可能性があります。
一人で判断しない
詐欺グループは、被害者を孤立させようとします。「家族には言わないで」「今だけの秘密」「他人に話すと投資枠がなくなる」などと言われた場合は、特に注意が必要です。
少しでも不審に感じたら、家族、警察相談専用電話、消費生活センター、金融庁の相談窓口などに相談してください。
被害に気づいたら何を残すべきか
すでに送金してしまった場合でも、相手とのやり取りや送金記録は削除しないでください。
次のような情報を保存しておくことが重要です。
- 相手のSNSアカウント
- LINEやメッセージアプリの履歴
- 送られてきたURL
- 投資サイトやアプリの画面
- ウォレットアドレス
- 暗号資産の送金履歴
- 銀行振込の明細
- 相手から送られた写真や身分証画像
- 税金・手数料などを請求された画面
米FBIも、暗号資産投資詐欺の被害に遭った可能性がある場合は、会社名、連絡先、送金方法、ウォレットアドレス、取引内容、やり取りの詳細などを記録し、IC3などへ通報するよう呼びかけています。
暗号資産の送金は追跡が難しい場合もありますが、ウォレットアドレスや取引IDが残っていれば、調査の手がかりになることがあります。
「恥ずかしい」「自分が悪い」と考えて相談を遅らせるよりも、まずは信頼できる機関へ頼ることを優先しましょう。
投資に関するご相談はINVEEKへ
ロマンス投資詐欺は、投資の知識だけで防げるものではありません。
詐欺集団は、投資商品ではなく、まず人間関係や信頼感を利用します。そのため、投資経験がある人でも、相手を信頼してしまうことで被害に遭う可能性があります。
特に、SNSやマッチングアプリで知り合った相手から暗号資産投資を勧められた場合、出金前に税金や保証金を求められた場合、海外業者や見慣れない投資アプリを紹介された場合は、慎重な確認が必要です。
INVEEKでは、投資に関する情報収集や判断に役立つ情報を発信しています。投資案件の内容に不安がある方、SNSや海外業者経由の暗号資産投資について確認したい方は、ぜひINVEEKへご相談ください。

