投資信託を保有していると、評価額がマイナスになり「このまま続けてよいのか」「今すぐ売却すべきなのか」と不安になることもあるでしょう。投資を始めたばかりの人ほど、マイナスに過剰に反応しやすく判断に迷いやすいものです。
しかし、投資信託のマイナスは必ずしも失敗を意味するわけではなく、慌てて行動しないほうがよいことが多いです。一方で、状況によっては見直したほうがよい可能性もあるため、放置が最適とは限りません。
本記事では、投資信託がマイナスになった時に放置すべき理由と放置してはいけないケースを整理して解説します。記事を読むことで投資信託がマイナスになった場合の行動を正しく判断するために必要な知識が身につくでしょう。
投資信託がマイナスになっても放置すべき理由

投資信託とは、投資家から集めた資金を一つにまとめ、専門家であるファンドマネージャーが株式や債券などに分散投資をおこなう金融商品です。少額から始められ、投資先の選定や管理を自分でおこなう必要がないため、投資初心者を中心に人気を集めています。
一方で、投資信託には元本割れのリスクがあり、市場の値動きによっては損失が出ることも。投資信託は基準価額をもとに取引されますが、状況によっては現在の基準価額が購入時の基準価額を下回り、マイナスになる可能性もあるでしょう。
しかし、価格が下がっても、すぐに行動を起こす必要があるとは限りません。投資信託は短期間の値動きで成果を判断するものではなく、長期的な成長を前提に運用する金融商品です。一時的なマイナスに過剰に反応して売却してしまうと、本来得られるはずだった成果を逃してしまうことも。
投資信託がマイナスになっても放置すべき理由を以下にまとめました。
- 短期の値動きは一時的なことが多い
- 長期運用を前提に設計されている
- 安い価格で保有口数を増やせるチャンスでもある
- 感情的に売却すると損失が確定する
- 運用を続けるほどマイナスになるリスクは減少する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
短期の値動きは一時的なことが多い
投資信託の基準価額は、株式市場や為替などの影響を受けて日々変動します。そのため、短期間ではマイナスになることは珍しくありません。経済の先行きに対する不安が広がり相場が下落する場面では、投資信託の基準価額が下がるケースもあります。
しかし、短期の値動きは一過性で終わることが多く、時間の経過とともに落ち着く傾向があります。幅広い資産に分散投資をおこなっている投資信託では、一時的な下落がそのまま長期的な損失につながるとは限りません。短期の数字だけを見て判断するのではなく、長い視点で運用状況を捉えることが重要です。
長期運用を前提に設計されている
投資信託は、短期間で利益を得ることを目的とした商品ではなく、長期運用を前提に設計されています。投資対象である株式や債券などの金融商品の値動きには上下がありますが、時間をかけて運用すれば、一時的な下落の影響を受けにくいでしょう。
積立投資をおこなっている場合は、価格が高いときも安いときも一定額で購入を続けるため、購入価格が平均化されます。短期的なマイナスがあっても、長期で見れば運用成果は安定しやすくなるでしょう。投資信託は、日々の値動きに一喜一憂するのではなく、長い時間をかけて安定した方法で大きな資産を築く考え方が基本です。
安い価格で保有口数を増やせるチャンスでもある
投資信託がマイナスになった局面は、見方を変えると安い価格で保有口数を増やせるタイミングでもあります。基準価額が下がっているときに積立を続ければ、同じ金額でもより多くの口数を購入できるからです。
その後、基準価額が回復した場合、増えた口数が運用成果を押し上げる要因になります。価格が下がっている時も機械的に買い続ける運用方針を取ることは、安い価格で保有口数を増やせるチャンスをつかみやすくなるでしょう。
感情的に売却すると損失が確定する
投資信託がマイナスになった場合も、不安や焦りから感情的に売却しないようにしましょう。その時点で売却すると、評価額のマイナスが確定し、そのまま損失になります。
一時的な下落であれば、その後に価格が回復する可能性もありますが、感情に任せて売却すると回復の機会を失います。短期の値動きに振り回されず、当初の運用目的や期間をあらためて確認し、冷静に判断できれば不要な損失を防げるでしょう。
運用を続けるほどマイナスになるリスクは減少する
投資信託は、運用期間が長くなるほど短期的な価格変動の影響が少なくなり、マイナスになるリスクが抑えられやすい特徴があります。投資を始めた時が相場の下落局面に当たる可能性はありますが、時間をかけることでマイナスになるリスクは減少するでしょう。
分散投資をおこなう投資信託では、特定の資産や地域に不調があっても、全体への影響は限られるため、長期的には右肩上がりの成長を期待できます。運用を継続するほど含み益の増加が期待できるため、短期的な値動きによるマイナスの影響を受けにくくなるでしょう。
投資信託を放置してはいけないケース

一方で、投資信託の評価額がマイナスになっている場合に放置してはいけないケースもあります。
- 純資産総額が継続的に減少している
- 運用方針が変化した
- 信託報酬などのコストが割高である
上記のケースに、保有している投資信託が当てはまる場合は、放置せずに対応を考えたほうがよいかもしれません。それぞれ詳しく解説します。
純資産総額が継続的に減少している
投資信託を放置しないほうがよい代表的なケースは、純資産総額が継続的に減少している状態です。純資産総額とは、投資信託に集まっている資金の総額を指します。純資産総額が長期間にわたって減り続けている場合、投資家の解約が相次いでいるかもしれません。
資金流出が続くと、効率的な運用が難しくなります。場合によっては繰上償還になり、運用が途中で終了するリスクも。一時的な減少であれば問題ありませんが、長期間にわたり純資産総額が減少し続けている場合は注意が必要です。運用レポートなどを確認し、純資産総額の状況を確認するようにしましょう。
運用方針が変化した
投資信託を購入してから運用方針や投資対象が変化した場合は、今後の対応を慎重に考える必要があります。例えば、国内株式中心だった投資信託が海外株式の比率を大きく高めたり、リスクを抑えた運用から積極的な運用に切り替えたりするケースが考えられるでしょう。
運用方針の変更自体が悪いとは限りませんが、自身の投資目的や許容できるリスクと合っているかどうかは確認する必要があります。目論見書などをチェックし、納得がいかない場合は投資先となる投資信託の変更を検討したいところです。
信託報酬などのコストが割高である
投資信託を長く保有する場合、割高な信託報酬は運用成果を悪化させる原因になります。信託報酬は投資信託を保有している間、継続的に差し引かれる運用手数料です。同様の運用方針や投資対象であっても、投資信託ごとにコスト水準は異なります。
定期的にほかの商品の信託報酬を確認し、より低コストとなる選択肢がないかどうかを比較するようにしましょう。ただし、コストが高くても運用方針による成長性が期待できると考える場合は問題ありません。コストに見合った成果が期待できないと感じる場合は、投資先の変更を検討したほうがよいでしょう。
投資信託のマイナスは借金ではない理由

一部に投資信託のマイナスを借金と考える人がいます。結論から言えば、投資信託のマイナスは借金ではありません。その理由は以下の通りです。
- 元本以上の損失を被らない仕組み
- レバレッジ型投資信託でも借金は発生しない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
元本以上の損失を被らない仕組み
投資信託の評価額がマイナスになっても、借金になることはありません。なぜなら、投資信託は元本の範囲内で価格が変動する仕組みであり、元本以上の損失を被らないよう設計されているからです。
投資信託の評価額は、基準価額として日々上下しますが、どれだけ下落しても投資した金額を超えてマイナスになることはありません。損失はあくまで投資した資金の中に収まります。追加でお金を支払う義務が発生する仕組みではないため、評価額が下がっても借金を背負う心配は不要です。
投資信託のマイナスは一時的な評価の変化であり、返済義務がともなう借金とは性質が異なります。
レバレッジ型投資信託でも借金は発生しない
投資信託にはレバレッジをかけられるレバレッジ型投資信託が存在します。レバレッジとは、自己資金を担保にしてそれ以上の取引ができる仕組みのことです。主にFXなどで設定されます。FXでレバレッジをかけて取引すると自己資金以上の損失が出た際に追加の資金が必要になり、実質的に借金をするケースも。
しかし、レバレッジ型投資信託では借金は発生しません。レバレッジ型投資信託のレバレッジは、FXとは異なり指数の値動きを一定の倍率で反映する仕組みであり、損失はあくまで投資した元本の範囲内に限られます。相場が大きく下落した場合でも、追加で資金を差し入れる必要はありません。
ただし、レバレッジ型投資信託は通常の投資信託と比較して値動きが大きくなりやすく、短期間で基準価額が大きく下がるリスクがある点には注意が必要です。借金の心配はありませんが、仕組みを理解せずに保有しないほうがよいでしょう。
投資信託の売却を検討してもいいケース

投資信託は、一時的なマイナスであれば慌てて売却せず様子を見ることが適切な場合が多いとされています。一方で、売却を検討してもいいケースも理解しておく必要があります。
なぜなら、投資で最終的なリターンを高めるためには出口戦略が重要であるからです。投資信託の出口戦略に通じる売却を検討してもいいケースを以下にまとめました。
- お金が必要になった
- 資産のリバランスをしたい
- 退職して取り崩すフェーズに入った
それぞれ詳しく見ていきましょう。
お金が必要になった
生活費や急な出費などでお金が必要になった場合は、投資信託の売却を検討しましょう。投資はあくまで余裕資金でおこなうものであるため、生活に支障が出る状況で無理に保有し続ける必要はありません。
医療費や教育費、転職や引越しなどの避けられない支出が発生し、貯金だけで賄えない場合は、投資信託などの金融資産を現金化する判断が現実的です。投資は将来に備える手段の一つであるため、生活に支障が出る状況で無理に保有することは本末転倒です。目の前の生活を安定させることを最優先にし、生活を立て直したうえで、余裕資金が確保できてから投資を再開しましょう。
資産のリバランスをしたい
投資信託は運用を続ける中で、当初想定していた資産配分が崩れることがあります。リバランスとは、資産配分を元のバランスに戻す調整のことです。例えば、株式と債券の投資信託を保有し、株式の比率が高くなりすぎた場合は売却して元の比率に戻すことで、リスクを抑えやすくなります。
リバランスを目的に売却するのであれば、投資信託を途中で売却しても問題ありません。全体のバランスを見直せば、より安定した運用ができる可能性があるからです。自身の資産配分を見直して、リスクに偏りがないかどうかを判断することは、運用する額が大きくなるほど投資では重要になります。
退職して取り崩すフェーズに入った
退職して定期的な収入がなくなった場合は、投資信託を売却して資産を取り崩して生活するフェーズに入ったと考えられるでしょう。ただし、一括で売却して現金化したいと考えたタイミングに相場が大きく下落している可能性もあります。
そのため、生活費や老後資金として計画的に使うための資金を用意するためには、徐々に売却して現金化するようにしましょう。証券会社が提供しているサービスには毎月の投資を自動化して楽にする自動積立だけでなく、保有する投資信託を毎月一定のタイミングで現金化できる定期売却もあります。取り崩すフェーズに入った場合は、定期売却の利用を検討したいところです。
投資信託がマイナスになった場合の税金

急にお金が必要になり投資信託を売却した時に評価額がマイナスであった場合、税金がかかるかどうか気になるかもしれません。投資信託がマイナスになった場合の税金に関する内容を以下にまとめました。
売却しても税金はかからない
投資信託を売却した時、評価額がマイナスの状態では税金はかかりません。課税されるのは利益が出た場合のみです。損失が出ている状態で売却しても税金を支払う必要はありません。
株や投資信託との損益通算ができる
投資信託を売却して損失が出た場合、株式やほかの投資信託で出た利益と損益通算ができます。損益通算とは、利益と損失を合算して、課税対象となる金額を減らせる仕組みです。例えば、株式で利益が出ている年に、投資信託の売却で損失が出た場合、その損失分を差し引いて税金を計算できます。
また、その年に通算しきれなかった損失は、確定申告をおこなうことで最長3年間繰り越すことも可能です。投資信託がマイナスになった場合でも節税に活用できる可能性があることを覚えておきましょう。
NISAでは損益通算ができない
損益通算の対象になるのは通常の課税口座で保有している投資信託に限ります。NISA口座で保有している投資信託を売却してマイナスが出た場合は損益通算ができません。NISAは運用益が非課税になる制度ですが、損失が出ても損益通算の対象にならない仕組みです。NISAで投資信託を保有している場合は、損益通算に利用できないため注意が必要になります。
まとめ
投資信託がマイナスになった場合に一番してはいけないことは、不安から焦って売却し、損失を確定させることです。短期的な値動きによるマイナスは一時的なものであることが多いため、放置が正解になることも多いでしょう。
ただし、状況によっては放置してはいけないケースもあれば、売却を検討してもいいケースもあるため、必ずしも売却の判断が間違いとは限りません。悩んでいる場合は、専門家への相談も検討しましょう。当社では、ご相談内容から売却の判断に関するアドバイスをおこないます。お気軽にご相談ください。

