投資信託をやめたほうがいいと言われる理由は？始める時の注意点も解説

投資信託はプロに運用を任せられるため、初心者も投資しやすい金融商品ですが「やめたほうがいい」と言われることもあります。投資にはリスクがあり、投資信託であっても例外はありません。また、投資に対する向き合い方によっては、必ずしも投資信託が正しいとは限らないケースもあります。

本記事では、投資信託をやめたほうがいいと言われる理由と、やめたほうがいい人の特徴を解説します。ネガティブな意見ばかりに振り回されることなく、客観的に判断したうえで投資信託を始め、継続を検討するようにしましょう。

投資信託の仕組み

投資信託（ファンド）は、投資家から集めたお金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家（ファンドマネージャー）が、株式や債券などの複数の投資対象に分散して投資する仕組みです。投資家は自分で銘柄を選ばず、日々の相場を見て売買する必要もなく、少額からプロの運用の恩恵を受けられます。

投資信託に資金を預けると、ほかの投資家の資金と合計されて運用されます。運用で得られた利益は、投資家が保有している口数に応じて分配される仕組みです。資金を預ける量が増えるほど、保有する口数が増えて、多くの利益が分配されるようになります。

運用は信託銀行が厳格に管理しており、運用会社が倒産しても投資家の資産は守られます。専門家に運用を任せられ、手軽に分散投資が実現できるため人気の金融商品です。

幅広い商品の種類がある

投資信託には、目的やリスク許容度に応じて選べる多彩な商品があります。以下に商品の種類をまとめました。

分類	種類	内容
資産別	株式	株に投資する
	債券	債券に投資する
	REIT	不動産に投資する
	バランス	株・債券・不動産を複合
	コモディティ	原油・金・穀物などに投資する
地域別	国内	日本の投資対象に投資する
	米国	アメリカの投資対象に投資する
	グローバル	複数の国に分散して投資する
	新興国	新興国に投資する
運用方法別	インデックス	市場平均と同じ動きを目指す
	アクティブ	市場平均以上の成果を目指す
レバレッジ別	ノンレバレッジ	レバレッジのない一般的な商品
	ブル	対象指数の倍の値動きがある
	ベア	対象指数と逆の動きをする

例えば、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500の値動きに連動するレバレッジをかけない一般的な投資信託は、米国株式のインデックスファンドと分類できます。投資信託は上記の例にある複数の分類を組み合わせ、日本の証券会社では数千種類ほどの多様な商品が販売されています。

インデックスファンドとアクティブファンドの違い

インデックスファンドとアクティブファンドは、運用の目的とコストの構造が異なるため、詳しく理解しておきたいところです。どちらを選ぶかで投資のリターンが大きく変化します。

インデックスファンドは、日経平均株価やS&P500などの市場指数と同じ値動きを目指します。運用の手間が少ないため、手数料が安いことから長期投資に適しており、人気が高いです。

アクティブファンドは、ファンドマネージャーが独自の調査や分析に基づき、指数を上回るリターンを目指して銘柄を選びます。ただし、手数料が高くなり、市場平均を上回ることが保証されているわけではありません。

プロであっても、長期的に安定して指数を上回る運用をおこなうことは難しいです。よって、インデックスファンドのほうが利益は安定しやすくなります。また、手数料が安いことから、運用年数が長くなるほど手数料負担の差で、アクティブファンドよりも高いリターンを期待しやすいでしょう。

投資信託をやめたほうがいいと言われる理由

投資信託に関する基礎知識を踏まえたうえで、投資信託をやめたほうがいいと言われる理由を紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

元本割れのリスクがあるから

投資信託をやめたほうがいいと言われる代表的な理由は、元本割れのリスクがあることです。投資信託は預金のように元本が保証されている金融商品ではありません。市場の価格変動や為替の影響によって、投資した金額よりも資産価値が減ってしまう可能性があります。

リーマンショックやコロナショックのような世界的な経済危機が起きると、投資信託は一時的に基準価額を大きく下げることがあります。絶対に損をしたくない方にとって、一時的であっても損を受け入れることは難しいかもしれません。投資信託は銀行預金のように額面が減らない資産ではないため、リスクを理解せずに始めると、後悔につながる可能性があります。

手数料が高い商品があるから

やめたほうがいいと言われる理由の一つが、手数料の高さです。投資信託の主な手数料の種類を以下にまとめました。

手数料の種類	内容
購入手数料	投資信託を購入する時にかかる
信託報酬	実質的には日割りで差し引かれる
信託財産留保額	投資信託を解約する時にかかる

近年は、購入手数料や信託財産留保額がかからない商品も増えています。そのため、信託報酬以外の手数料がかからないことを前提に、信託報酬を比較して安い商品を選ぶことが重要とされています。

しかし、投資信託の種類によっては信託報酬が高い商品が存在します。商品の概要がどれだけ魅力的なものであっても、手数料が高ければ長期の運用では不利になりやすいでしょう。

インデックスファンドと比較して手数料が割高であるアクティブファンドや、ESGやテクノロジーなど目を引きやすい特定のテーマを投資対象としている投資信託は、高い手数料が要求される場合もあります。初心者は、手数料を確認せずに選ぶと後悔しやすい点に注意しましょう。

短期的な利益を狙うには不向きだから

投資信託は、短期間で大きな利益を得たい人に向いていません。株のようにリアルタイムで売買できず、1日1回のみ基準価額が変動します。市場の値動きに応じてタイミングよく利益を出すことは困難です。短期投資を前提に投資するのであれば、投資信託よりも適した投資対象は存在します。

ただし、ブル・ベア型ファンドなどレバレッジをかける投資信託は、値動きが倍になり、市場が下落している時にも利益を出せることから、短期投資向けの商品です。そのため、すべての投資信託が短期投資に向いていないわけではありません。

個別株とは異なり優待がないから

投資信託と日本の個別株式を比較した場合、投資信託には株主優待がありません。株式投資では、特定の企業の株を保有していると株数に応じて、株主優待が受けられる場合があります。株式型投資信託に投資する場合、間接的な所有と認識されるため、投資信託をどれだけ保有しても株主として扱われることはありません。

企業から優待を受け取ることを投資の楽しみにしたい方にとって、投資信託はやや物足りなく感じるかもしれません。株主優待を重視して投資する場合は、投資信託よりも株式投資のほうが向いているでしょう。

成果は選んだ商品に依存するから

投資信託の成果は選んだ商品に大きく依存します。やめたほうがいいという意見は、投資信託全体ではなく、特定の商品への評価である場合も多いのです。

例えば、自分が選んだ投資信託よりもリターンが大きかった場合や、手数料が安い場合はやめたほうがよかったと後悔する可能性があります。

投資信託は、投資しただけで自動的に成果が出る商品ではありません。とくに商品選びを誤ると、長期で継続しても期待した利益に届かない場合があります。

投資信託をやめたほうがいい人の特徴

投資信託をやめたほうがいいと言われる理由を考えると、必ずしも投資信託全体に向けられた言葉ではないことがわかります。とはいえ、次の2つの特徴に当てはまる人には、投資信託は向かない傾向があります。

それぞれ詳しく解説します。

一切のリスクを許容できない

投資信託は、一切のリスクを許容できない方にはおすすめできません。投資信託を購入した時点で、一時的であっても元本割れする可能性は受け入れる必要があるからです。資産が少しでも減ると強い不安を感じてしまう方には向かないでしょう。

一切のリスクを許容できない理由として、金額が減らない預金がもっとも安全と信じている方が多いことが考えられます。預金は元本が保証されているため、預けているお金が減ることはありません。しかし、インフレを理由にお金の購買力が下がるリスクに対応できない場合があります。

現在の預金は低金利であるため、金利がインフレ率を下回ると実質的なお金の価値は減少します。預金残高は減らなくても、将来に今あるお金の価値をそのまま残せないことも。投資信託は元本割れのリスクを許容する必要がありますが、今後もインフレが続く場合に備えて、今あるお金の価値を将来に残す方法に適しています。

すぐに大きなリターンが欲しい

投資ですぐに結果を出したいと考えている方にとって、投資信託は基本的に適しません。リアルタイムで売買ができる株やFXなどのほうが、短期投資には向いている投資対象になります。投資信託は時間をかけてお金を増やす方法であるため、長期を前提に投資しなければ成果は期待できないでしょう。

ただし、投資初心者の方ですぐに大きなリターンを獲得したいと考えても現実的には難しいです。短期投資では共通して、購入のタイミングと売却のタイミングを自身で考える必要があります。大きなリターンを得るためには相応のリスクを背負う必要があるため、タイミングを誤れば大損することも。

プロが独自の調査で運用するアクティブファンドでも、方法を間違えて損をする場合もあります。プロであっても市場の値動きにあわせて利益を最大化することは難しいです。初心者で短期投資に興味がある場合も、投資信託などの長期投資向けの商品に投資をして、経験を積んでから始めるほうがいい結果につながりやすいでしょう。

投資信託は続けやすい投資対象である理由

投資信託は投資を継続しやすい投資対象であるため、やめたほうがいいと言う意見はごく一部です。投資信託は続けやすい投資対象である理由を3つ紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

投資方法を間違えなければ損をする可能性は低い

投資信託は、投資方法を間違えなければ損をする可能性は低いため、安心して継続しやすいです。複数の銘柄や資産に分散して投資するため、一つの投資対象の価格が低迷しても影響を受けにくいでしょう。

また、投資信託への投資方法は毎月決められた日に一定額を投資するドルコスト平均法が推奨されています。投資信託の購入単価を長期的に平均化できるため、高値掴みのリスクを軽減可能です。

ドルコスト平均法で長期投資に適した投資信託に投資を続ければ、一時的に損をするケースはあっても、長期的に損をする可能性は低いです。継続するほどリスク回避につながる構造であるため、投資信託への投資は続けやすく、続けることが効果的になっています。

少額から無理なく継続できる

投資信託は、まとまった資金を必要とせず少額から投資できます。個別株の場合、1社の株を購入するために数十万円以上の資金が必要になる場合もあります。一方で、投資信託は商品によっては100円から投資できるため、初心者も気軽に始められるでしょう。

学生・主婦（主夫）など、どのような立場の方であっても生活に支障をきたさない範囲で資産形成を始められます。投資額が少額であれば、損失が発生しても痛手が少ないため、勉強をしながら安心して継続が可能です。

値動きを頻繁にチェックする必要はなく手間がかからない

投資に対してチャートや企業の決算状況を確認し、値動きを常にチェックする印象がある方もいるかもしれません。投資信託は、値動きを頻繁にチェックする必要はなく、自動化すれば購入の手間もかからないでしょう。

銀行・証券会社で自動積立を設定すれば、毎月決まった日に口座から自動で引き落とされ、投資信託を購入してくれます。放置していても投資の継続が可能であり、短期的な値動きに一喜一憂する必要もありません。始めれば自動的に投資を続けられることから、日々のなかでやめたいと思うことは少ないでしょう。

投資信託を始める時の注意点

投資信託を始める時の注意点を5つまとめました。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

購入前に投資目的を明確にする

投資信託を始める時、目的や方針を明確にしなければ、目の前の値動きに振り回されて途中でやめてしまうことがあります。投資信託は目的を定めて長期的に運用して成果を出す金融商品です。

例えば、老後の資産形成を目的にするなら、60歳以降になるまで売却を考える必要はありません。10年後を想定して子どもの教育資金を貯めることを想定して始める場合は、想定される運用期間は10年になります。

ゴールを設定すれば途中売却を防げるため、購入前に投資の目的を設定すれば継続しやすいでしょう。

商品の種類と性質を理解する

投資信託にはさまざまな種類があるため、商品の種類と性質を理解して投資することが重要です。例えば、株式型投資信託は期待できるリターンが大きい反面、リスクが高くなります。一方で、債券型投資信託は安定性が高くリスクを抑えやすいでしょう。

投資信託の種類によって、リターンとリスクのバランスは異なります。商品の種類と性質を理解して投資信託を選ぶことで、始めてから「想定とは違った」などの感想を抱きにくいでしょう。

手数料を確認する

投資する投資信託を選ぶ場合、必ず手数料を確認するようにしましょう。手数料は最終的な成果にも直結する要素です。購入手数料・信託財産留保額が無料であることを前提に信託報酬を比較することが重要になります。

信託報酬が1.5%の投資信託に100万円を預けている場合、年間で約1万5,000円がコストとして引かれる計算です。しかし、信託報酬が0.1%であれば、コストは約1,000円になります。長期投資では信託報酬で最終的な運用成績で数十万円以上の差がつくことも珍しくありません。

積立投資額は無理のない範囲に設定する

投資信託をやめずに継続して投資するには、無理のない金額で続けることが重要です。商品選びに問題はなくても、毎月の積立額が家計を圧迫すれば、継続が難しくなります。長く続けるなら、積立額は無理のない範囲に設定しましょう。

目安は、可処分所得の10％程度です。手取り30万円であれば、3万円の積み立てが適切になるでしょう。また、損失を抱えることに不安がある場合、最初は1,000円～5,000円程度の少額から始め、経験を積んでから投資額を増やすことも考えられます。

積立額を増やすほど期待できるリターンは高まります。しかし、長期投資は無理なく続けられることが重要であるため、重い負担になる積立額は避けるようにしましょう。

投資で起こりえるリスクを理解する

投資信託はリスクをできる限り軽減して投資できる方法になりますが、それでもリスクは避けられません。投資信託には大きく分けて以下の4つのリスクがあります。

リスクの種類	内容
価格変動リスク	株式・債券・不動産などの価格が下落する
為替リスク	海外資産の運用で円高になると基準価額が下落する
金利変動リスク	金利の変動により債券価格に影響を及ぼす
信用リスク	投資先の企業や国が倒産・デフォルトする

投資信託のリスクは価格変動リスクだけでなく、為替リスク・金利変動リスクにより損をする可能性があります。投資信託は投資先を分散して信用リスクを軽減していますが、投資先の企業や国が倒産・デフォルトすれば影響は避けられないでしょう。リスクを理解したうえで、正しく向き合う姿勢が投資信託を始めるのに必要です。

投資信託以外で積立投資に適した投資方法

継続して投資をおこなう積立投資の代表的な投資対象として知られる投資信託ですが、投資信託以外にも積立投資に適した投資方法はあります。具体的な方法を以下にまとめました。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

貯蓄型保険

貯蓄型保険は保険と資産形成を両立して、保険料を積み立てられます。毎月一定の保険料を支払い、将来的に満期保険金や解約返戻金として受け取れる仕組みです。万が一の際には保障を受けながら、同時に積立による貯蓄をおこなう形になります。

満期時に受け取れる保険金は一定の利率が上乗せされます。よって、元本を確保したうえで資産運用が可能です。ただし、途中解約をすると解約返戻金が元本を下回ることも。そのため、余裕をもって保険料を積み立てられることが必須です。

純金積立

純金積立は、毎月一定金額を積み立てて金（ゴールド）を購入する投資方法です。金は世界的に価値が安定しており、有事の金として古くから信頼されてきました。

現物を保有する場合はインゴットや金貨などを購入する必要があるため、数十万円以上の資金が必要になります。しかし、純金積立であれば月1,000円からの少額から証券会社・貴金属会社をとおして投資を始められます。

ただし、金には利息や配当がないため、金融資産と比較してリターンは限定的になる場合も。株式や債券などの値動きと連動しないことから、投資信託と並行して積み立てる資産になるでしょう。

まとめ

投資信託は、プロに運用を任せながら少額から投資できる便利な金融商品です。しかし、一切リスクを許容できない場合や、短期的な利益を求める場合はやめたほうがいいと言われることもあります。

投資信託は短期間で利益を出す商品ではなく、長期を前提に安定して成果を出します。目的を明確にして、無理のない金額で積み立てる方にとって、投資信託は資産形成の手段となります。

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