ヘッジファンドの運用方針は通常の投資信託と比較して自由であり、空売りを利用して市場が下がっているときも利益を得られるように取引をします。
空売りは金融商品を保有せず売却する取引のことで、売却した後に商品を購入するので価格が下がることで利益を得られます。
大きなレバレッジをかけた空売りをおこなうヘッジファンドはメリットもありますが、リスクもありますのでヘッジファンドに投資をする前に空売りのリスクについて知っておく必要があります。
この記事ではヘッジファンドの空売りの仕組みとメリットとリスクについて解説していきます。
ヘッジファンドの空売りの仕組み
まず空売りの仕組みについて下記の図にまとめました。
空売り(信用売り)は金融商品を保有せず売却してその後買い戻す取引のことです。
例えば1,000万円の価値がある金融商品を空売りしたとき、その商品の価値が800万円になったときに買い戻せば下落した差額の200万円の利益になる仕組みです。
通常の取引であれば、金融商品を購入して価値が上がったときに売却すれば利益が出ますが、空売りは取引の順序が逆であるため価格が下がった時に利益が出ます。
一方で、800万円で買戻しせず、その後急騰して1,200万円まで価値が上昇したとします。
この場合は、1,000万円で売却した商品を1,200万円で買い戻す必要があるため200万円の損失です。
また、空売りは信用売りとも呼ばれ、信用取引が前提なので半年以内に商品を買い戻す必要があります。
つまり、現在の価格が過大評価されていると考えられる銘柄に半年以内に価格が下落することを見込んで取引をおこなうことになります。
ヘッジファンドはこの空売りという取引を用いて、市場が下落しているときもリスクをヘッジしながら最大限の利益を追求する運用方法を取る金融商品です。
通常の投資信託の運用は行政が監視しているので相場が下落していても利益を追求できる運用方法をおこなえず、市場が下落していれば連動して価格も下落する商品がほとんどです。
しかし、ヘッジファンドであれば個人資本だけではなく他人資本を利用したレバレッジ取引と空売りを用いることで下落相場の中でも利益を得ることができます。
次は、ヘッジファンドにおける空売りのメリットについて解説していきます。
ヘッジファンドの基礎知識について知りたい人はこちらの記事をチェックしてください。
ヘッジファンドとは?初めての方に3つのメリットをわかりやすく解説
ヘッジファンドにおける空売りのメリット
ヘッジファンドにおける空売りのメリットは2つあります。
- 相場が下がっていても利益を得られる
-
大きなレバレッジをかけてさらに高い利益を狙う
相場が下がっていても利益を得られる
ヘッジファンドは通常の投資信託とは異なり運用方法が自由なので空売りを用いることで相場が下がっていても利益を得ることができます。
通常の投資信託は市場の上昇、下落に連動して運用成績が決まりますが、ヘッジファンドは市場が下落していても空売りで利益を得られるので最終的な利回りが高くなりやすいです。
ヘッジファンドは通常の投資信託よりも必要とされる資金が多いため敷居が高いですが、資産があるなら通常の投資信託よりもヘッジファンドを購入した方が資産を増やしやすいといえます。
最低でも数百万円程度の資産が必要になりますが、まとまった資産を持っているのであれば空売りで利益を徹底的に追求するヘッジファンドを選択するのはメリットが大きいといえます。
大きなレバレッジをかけてさらに高い利益を狙う
ヘッジファンドは空売りに大きなレバレッジをかけてさらに高い利益を狙います。
投資でお金を最大限に増やすのであれば自己資本だけでなく他人資本を用いて投資をする方が大きな利益が狙えます。
もちろん、損失が出た場合は損失も大きくなりますが、高い投資パフォーマンスを誇っているヘッジファンドは大きなレバレッジをかけた取引をしていること多いです。
ヘッジファンドが通常の投資信託と比較して利益を得られるのは空売りとレバレッジを利用した取引をしていることが挙げられます。
しかし、このような取引にはリスクも存在しますので、次はヘッジファンドにおける空売りのリスクについて解説していきます。
ヘッジファンドにおける空売りのリスク
ヘッジファンドはその名の通り、リスクを回避して運用するファンドです。
しかし、どんなにリスクを避けて運用していたとしても高いレバレッジをかけて取引をするヘッジファンドは破綻する可能性があります。
有名なヘッジファンドが破綻した原因として高いレバレッジをかけたことで破綻したものもあるので、空売りに大きなレバレッジをかけるヘッジファンドは大きな利益を得られる可能性はありますが同時にリスクが高いです。
例えば、有名なヘッジファンドの破綻ではLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)はアジア通貨危機とロシア財政危機によって破綻しました。
運用チームにはノーベル賞を受賞する天才も関わっていましたが、高いレバレッジをかけて取引したことで相場の大変動に耐え切れず破綻してしまいました。
空売りに限らずどの取引でもいえますが、大きなレバレッジをかけて取引をすると直近の市場の大変動であればリーマンショックやコロナショックに耐え切れず破綻するリスクがあるといえます。
市場に絶対はないので、万が一想定していない形で市場が動いた場合に大きなレバレッジをかけて空売りをしているヘッジファンドはリスクが高いです。
適切なレバレッジをかけて空売りをおこなっているヘッジファンドであれば大きなリスクはありませんが、投資パフォーマンスが異様に高いヘッジファンドは高いレバレッジをかけた空売りなどの取引をおこなっている可能性があるので注意が必要です。
ヘッジファンドのリスクについては下記の記事をチェックしてください。
ヘッジファンドの5つのリスクと回避する方法について解説します!
最後にヘッジファンドの空売りによって起こったといわれている事例について解説します。
アジア通貨危機はヘッジファンドの空売りで発生した?
LTCMの破綻の原因にもなったアジア通貨危機はヘッジファンドの空売りによって発生したといわれています。
1990年代、アジアの通貨の価値が過大評価されていると考えたヘッジファンドはアジア通貨に対して空売りを仕掛けました。
ヘッジファンドが空売りを仕掛けたことで1997年7月にタイを中心に自国の通貨を支えることができなくなりアジア通貨が大暴落しました。
大きな影響を受けた国はタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、韓国であり、中国と日本は大きな影響を受けず、日本は影響受けた国の支援をする役回りを果たします。
タイでは当時の政権が失脚するほどの影響が発生していますが、影響を受けた国は今後同じような状況に陥らないため外国資本に頼らない政策に移行していきました。
ヘッジファンドの空売りが経済に大きな影響を与えた出来事であったといえます。
この事例によって空売りという取引の是非が問われることも多くなり、空売りという取引自体に抵抗感を持つ人はいます。
空売りの是非に関しては皆さんがそれぞれ決めるべきだと思いますが、ヘッジファンドの空売りの事例として有名なものなので、ヘッジファンドに投資をする前にこのような事例があったことを知らなかった人はアジア通貨危機について理解しておきましょう。
このようにヘッジファンドにまつわる事例を学ぶことによって見えてくるものがあるので、破綻するヘッジファンドに投資をしないためにヘッジファンドの失敗事例をまとめた記事もチェックしてください。
ヘッジファンドの失敗事例と失敗しないための3つの方法を徹底解説!
まとめ
ヘッジファンドの空売りについて理解していただけたでしょうか?
ヘッジファンドは空売りによって通常の投資信託よりも高い利回りを実現しやすい商品です。
しかし、過剰なレバレッジは大きなリスクを生みます。
リスクが低く破綻しないヘッジファンドを選ぶためには、運用実績を見てどの程度のリスクで運用をしているのか読み取れる知識が必要です。
難しい場合は投資のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することでヘッジファンドのリスクを見極められるので、そもそも選び方が分からない人もまずは気軽に上記の無料セミナーに参加して相談してみましょう。
また、ヘッジファンドを含む資産運用に関してどこで相談するべきか詳しく知りたい人はこちらの記事をチェックしてください。