近年の海外投資ブームにより、投資詐欺の被害が増えています。
国内の投資とは違い、海外の投資の場合は、高利回りの商品が多く魅力が多いものばかりです。
その一方で、運用会社が無許可であったり、海外にあり実態が不明な場合などがあり、資金が持ち逃げされてしまうケースがあります。
また、投資詐欺まではいかないまでも、会社が資金を使い込んでしまい、出資者のもとに戻ってこないケースなどもあります。
今回は、そういった投資詐欺被害に遭わないために、投資詐欺のよくある手口と商品事例、また詐欺を見分けるポイントや遭ってしまった場合の対処などについて詳しく説明していきます。
投資詐欺の被害状況
金融庁に寄せられる投資詐欺的な相談件数が下記です。
一時期に比べると、相談件数自体はだいぶ減ってはきていますが
これだけ詐欺に関するニュースなどが流れ、認知度が高まってきたとはいえ、まだ被害者がいるのが実状です。
平成28年1月から平成29年3月までの間、相談件数の合計は1495件でそのうち855件、全体の約57%が実際に被害にあっています。
平成28年1月から平成28年12月までの間に受けた相談を年代別に見てみると、70代が27.4%と突出して高く、次いで80代以上が15.8%、60代が15.5%となっており、60代以上の割合が全体の約59%を占めています。
出典:金融庁 相談室における相談等の受付状況等
投資詐欺について
海外投資詐欺においては、販売会社そのものやその販売手口に問題があるパターンがほとんどです。
海外投資詐欺においても、そのほとんどは、国内のIFA(個人のファイナンシャルプランナー)が金融庁に無許可で海外ファンド、海外FX、オフショアファンドなどを運用しております。
その手口もとても巧妙化しており、下記に代表的なものをご紹介しています。
また、その商品自体に問題があるケースもあります。
投資対象として使用される商品については、まともな商品であれば認可や登録制度がなされており、行政レベルの預金保護、あるいは投資家保護の仕組みが必ず設けられています。
下記に、海外投資詐欺対象としてよく扱われる商品事例を挙げておきました。
しかし、下記に記載している商品について、必ずしも商品そのものに問題があるというわけではなく、むしろ人気のある商品だからこそ、海外投資詐欺の対象として扱われている傾向がある、ということを、念頭に置いて下さい。
①海外投資詐欺の手口
ポンジ・スキーム
投資詐欺について、投資対象は違えど使われてる手口のほとんどがこの「ポンジ・スキーム」という手口であると言われています。
いわゆる自電車操業的な詐欺の手口で、「出資金を運用し、出た利益を配当金として支払う」と言って多数の投資家からお金を集めていきます。
しかし、実際には運用などは行っておらず、次々と新しく得た出資金の一部を以前からの投資家へあたかも配当金であるかのように支払います。
それをどんどん繰り返していき、いずれ配当金を支払わなくなるというものです。
出資者は最初の段階では、実際に配当金をもらえるためさも投資が本当に利益を生み出しているように見えます。
しかし、実際には負債が増加していくだけなので、いずれ破綻し配当金が支払われなくなります。
下記の図は、一人の投資家からの出資金が100万円、毎月配当として10%(10万円)を支払う、という条件で10人の投資家から100万円ずつ、合計1000万円集めた例です。
劇場型
劇場型とは、複数の人物がグルになって出資者をだます犯罪手口です。
例えばAが「X社の未公開株を安く売るので買いませんか?」と持ち掛け、別の人物Bが「X社の未公開株を探してるんですけど売ってくれませんか?」と言い、相手に「この株はすごく有望なのかも」といったように思い込ませる手口です。
第三者が介入してくることにより、相手は信じやすくなり騙されてしまうことが多いです。
ネットワークビジネス(マルチ商法・ねずみ講)
これらはピラミット型の階層組織を形成し、新たな参加者を勧誘する販売展開で、紹介された
販売員が商品を売れば、紹介した方にもマージンが入る仕組みになります。
販売員が1万人を超えるような巨大な組織もあると言われています。
例えば、親ネズミが積立額5万円、10年積立のファンドを販売したとします。
この親ネズミは、海外のIFA(個人のファイナンシャルプランナー)から報酬として積立額10か月分の50万円(5万円×10か月=50万円)をもらいます。
そして親ネズミは、セミナーなどで子ネズミを集め、子ネズミが商品を販売すると親ネズミは2か月分の報酬を子ネズミからもらい、子ネズミは残り8か月分の報酬を手に入れます。
さらに子ネズミが孫ネズミを作り、同じように孫ネズミが商品を販売すると、子ネズミは2か月分の報酬を孫ネズミからもらい、孫ネズミは残り6か月分の報酬を手に入れます。
このようにして連鎖的にどんどん増えていき、知識のない紹介者がどんどん商品を販売していきます。
②海外投資詐欺の商品事例
海外FX投資系
顧客にFX取引の自動売買ソフトと称するソフトウェアを購入させ、海外の金融機関の口座に資金を投資させる事案です。
運用のプロが作成したソフトが、自動で売買をして利益を出す仕組みになります。
昔から流行している、被害の多い詐欺取引です。
海外積立投資系
例えば、100万円投資して、毎月5%の利回りが出るから、毎月5万円利益が出る、というもので毎月分配型の投資信託のようなものです。
上記で挙げたポンジ・スキームの手口などで販売され、最初のうちは分配金が支払われているのですが、1年くらい経つとお金が支払われなくなります。
これは実際には運用はしておらず、各出資者から集めたお金を分配に充てているだけだったり、運用していたとしても、いかにも利益が出ているかのように見せかけ、同様に投資金を分配しているケースなどが該当します。
仮想通貨系
近年、詐欺被害が急増しているのが、仮想通貨による取引です。
仮想通貨というと、「ビットコイン」を思い浮かべる人が多いと思います。
仮想通貨による投資詐欺は概ね「これからどんどん需要が増加する仮想通貨を今のうちに購入して価値があがったタイミングで売却することで利益を得る」というものです。
必ず値上がりすると言われて仮想通貨を購入する契約を結び、代金を支払ったが解約できない、といったものや、仮想通貨を代わりに買ってくれれば高値で買い取ると言われ契約したが、約束どおりに買い取られない、などといった劇場型の勧誘トラブルも多くみられます。
また、ビットコイン以外の仮想通貨である、「アルトコイン」と呼ばれる市場価値のほとんどない仮想通貨による被害も増えています。
こんな勧誘には要注意
・「必ず儲かります」、「元本は必ず保証されます」と勧誘してくる
どんなに良い金融商品であっても、投資には多少なりとも必ずリスクがあり、収益がマイナスになったり元本割れしたりする可能性があります。
・やたらと「高い利回りが出る」と勧誘されている
年間利回りが30%以上出ます、などど異常に高い配当を持ちかけて勧誘する場合です。
たしかに海外には、新興国など日本に比べて高配当な投資商品は少なくありませんが、どんなに高くてもせいぜい10%~15%などです。
それ以上は怪しいですし、リスクが高すぎるのでやめておきましょう。
・業者が「金融庁(またはその他の公的機関)から、認可・許可・委託・指示などを受けている」と説明している
投資詐欺によく見られる手口で、金融庁などの公的機関が投資の勧誘などを民間業者に委託・指示することはありません。
・金融庁や財務省財務局、消費者庁や消費生活センター、証券取引等監視委員会などの公的機関や、それらを連想させるような名称を使っている
上記と同じで、これらの公的機関が勧誘を委託することなどはありません。
見分けるポイント
投資先の会社の所在、詳細を確認する
投資先の会社の所在や実態についてなるべく詳細に確認します。
とくに大事なのは、その金融機関および会社が各国の金融商品を取り扱うライセンスを持っているか、ということと金融商品自体が各国の金融当局の認可を受けているか、ということでライセンスがない会社は絶対にやめましょう。
また、会社が商品の特性やリスクについてもきちんと説明しているかどうかが重要です。
運用状況などを確認できるか?
投資しているお金がしっかりと運用に回されているか、また運用状況がどうなっているかなどをWEBやレポートなどからしっかり確認できるかどうかが重要です。
投資したお金が実際に運用されておらず、ただその中の一部から配当されていて、1年後などに連絡がつかなくなる、などはよくある話です。
投資ファンドのスキームに第三者機関が介在していない
投資ファンドなどの運用において、第三者が介在することは非常に重要であると言えます。
例えば、資金の持ち逃げ防止のために通常カストディアンと呼ばれる信託銀行が入り、投資家の資金を運用会社や信託銀行自体の資産とは別に管理するため、運用会社や信託銀行が破産した際も、投資家のお金がなくなってしまうことはありません。
詐欺に合わないためには
第三者に判断してもらう
利害関係のない詳しい第三者に状況を冷静かつ客観的に判断してもらいましょう。
自分では気づかなかったリスクや状況などを教えてくれるかもしれません。
知識をつける
自分自身である程度知識をつけておくのも重要です。
投資商品や仕組みなどについて細かく知っておく必要はありませんが、契約から償還までのプロセス、お金の流れ、なぜ利益が発生するのか、どんな商品が存在するのか、平均してどのくらいの利回りなのか、などはおさえておきましょう。
資金に余裕がある範囲で行う
余剰資金での運用であれば、比較的安全に資産を運用する選択肢を選びやすくなりますし、精神的に余裕が生まれ、怪しい投資にも引っかかりずらくなります。
また、万が一ひっかかってしまったとしても、余剰資金であれば破産することは免れます。
それでも詐欺にあってしまった場合は
実際に投資のトラブルにあってしまった場合などは、まず消費者センターや金融庁の「金融サービス利用者相談室」などに連絡してみましょう。
問題点の整理をしてくれたり、トラブルの解決をサポートするための機関などを紹介してくれます。
また、金融庁などが自らトラブルのあっせんなどはしてくれないため、実際の解決には①弁護士に相談するか、もしくは海外投資に精通しており、リスクなどについても細かく説明してくれる②ファイナンシャルプランナーに相談しましょう。
①弁護士に相談する
詐欺被害にあってしまってお金が戻ってこない場合、法的な措置として弁護士に相談をします。
しかし、実際には訴えてもお金が戻ってくることはほとんどなく、弁護士費用の方が高くつく場合も少なくありません。
②ファイナンシャルプランナーに相談する
手続きをしたファイナンシャルプランナーが、海外投資に精通していなかったり、リスクに対する説明をきちんとしていなかったりして、運用の仕方や契約内容がこちらの意図しているものと違った、などといった場合、その投資資金を適切に見直すため、それらに精通した信用できるファイナンシャルプランナーに相談しましょう。
①の弁護士への相談は、あくまで相手側に明らかな違法性があった場合による法的な手続きでの資金回収になりますが、実際に取り戻せるケースはほとんどありません。
それよりも、今の資産をどう運用して回収していくか、といった前向きな視点が重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
投資詐欺については、普段なじみがなく知識が乏しいため詐欺がどうかの判断は非常に難しくなります。
一番大事なことは、商品そのものに目を向けることではなく、それを販売するファイナンシャルプランナー自体に目を向けることです。
そのファイナンシャルプランナーに海外投資の実績があり、投資のリスクなどもしっかりと説明しているかをきちんと見極めましょう。