投資信託を購入するにあたって気になるのは利回りではないでしょうか?
1年間投資してどれだけの利益が出るのかを知ることは、今後投資信託で資産形成をおこなっていく上でも重要になります。
ただし、利回りが高い投資信託が必ずしもおすすめの投資信託であるとは限りません。
この理由は後ほど説明いたします。
今回の記事では投資信託の利回りについて詳しく解説していきます。
投資信託の利回りとは?
まずはじめに利回りという言葉はご存知でしょうか?
利回りと似た言葉では、利率という言葉もあり、違いが分からないという人もいると思います。
また、投資信託には仕組みを知っているだけで簡単に利回りを大きくすることができる方法もあります。
この項目では「利回りとは何か?」について説明していきます。
利回りと利率の違い
利回りと利率は似ているようで表しているものはまったく異なります。
投資信託の利率は、一定の期間で得られる投資した金額に対して定期的に発生する分配金の割合を示しています。
一方、投資信託の利回りは分配金の収入だけではなく、売却した際に発生する売買差益などの全ての利益の割合を示しています。
利率と利回りの違いは、利子収入のみの割合であるか、利子収入を含めた全ての利益の割合であるかの違いになります。
また、投資信託の利益は主に売買差益と分配金になります。
売買差益は、投資信託を売買した際に発生するキャピタルゲインです。
分配金は、定期的に発生する利子収入でインカムゲインとなります。
利回りは債券や株式などでも利益を考える指標として使われます。
分配金の再投資で利回りを高める
定期的に発生する分配金は受け取るか、再投資するかを決めることができます。
投資信託を長期保有した場合、分配金を再投資するかどうかで最終的な利回りが大きく異なります。
たとえば、投資信託に100万円を投資して、年間利回り5%で5年間運用できたとします。
このとき、分配金を受け取る場合と再投資する場合の利益を比較したのが下記の表になります。
年数 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
分配金を受け取った(単利) | 1,050,000円 | 1,100,000円 | 1,150,000円 | 1,200,000円 | 1,250,000円 |
分配金を再投資した(複利) | 1,050,000円 | 1,102,500円 | 1,157,625円 | 1,215,506円 | 1,276,282円 |
差額 | 0円 | 2500円 | 7625円 | 15,506円 | 26,282円 |
このように長期保有であれば長期保有であるほど利益に差が生まれるのです。
投資信託に長期的に投資をするのであれば、分配金は再投資したほうがよいでしょう。
このような投資方法を複利投資といいます。
利回りは分配金を受け取る単利での投資よりも、複利投資のほうが高くなる仕組みとなっています。
ただし、分配金を受け取らない場合利益は確定しないため、投資信託の基準価格が大きく下がることで損をする可能性はあります。
100万円から始める資産運用について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
100万円から始める資産運用とは?最もおすすめな6つの方法!
投資信託の利回りを決める要素
投資信託の利回りは、投資金額、利益、コスト、期間によって決まりますが、利回りを判断するうえで便利な指標として騰落率とトータルリターンがあります。
この項目では、騰落率とトータルリターンと利回り以外に注意するべき点についても解説していきます。
騰落率とトータルリターン
まず、騰落率は、一定の期間の間に基準価格がどう変動したのかをパーセンテージで表したものです。
たとえば、証券会社の投資信託のページを開くと、基準価格の騰落率を示した表やグラフがあり、1週間、1ヵ月、1年、5年といった期間での騰落率を見ることができます。
次に、トータルリターンは、投資信託の分配金や手数料なども含めて、一定の期間の間に基準価格がどれだけ変動したのかを表したものです。
トータルリターンも証券会社のページで確認することができます。
下記の図に騰落率とトータルリターンについてわかりやすくまとめました。
それでは、騰落率とトータルリターンどちらのほうが利回りを決める指標として重視されるのでしょうか?
結論から申し上げますと、トータルリターンが重視されます。
理由は分配金と手数料についても着目しているので、騰落率よりも利回りがわかりやすいからです。
また、証券会社は投資家に対して1年に1回以上、投資信託のトータルリターンを通知する義務があります。
投資信託の利回りを決める要素である分配金を含めた利益やコストについても考えられているトータルリターンが現在では重視されているのです。
利回りを判断するのであれば、トータルリターンを参考にするのがおすすめです。
ただし、トータルリターンはあくまで過去のデータなので、未来においてもこのデータ通りの利益がでるとは限らないことには気をつけましょう。
利回り以外に注意するべき点
投資信託は利回りも重要ですが、手数料などのコストにも注意する必要があります。
投資信託の手数料には以下の3種類があげられます。
- 購入手数料
- 信託報酬
- 為替ヘッジの手数料
購入手数料は、購入時にかかる手数料で、証券会社、銘柄によっては無料の場合もあります。
次に、信託報酬は、投資信託の管理・運用をしてもらうための手数料です。
投資信託を選ぶにあたって、この信託報酬の安さが非常に重要です。
たとえば、銀行の投資信託の信託報酬は高いことが多く、安くて0.5%、1%から2%以上の投資信託がほとんどになります。
しかし、インターネットバンキングであれば、信託報酬が0.1%の投資信託も存在します。
1%や0.1%の差が大きくないと感じる人もいるかもしれませんが、長期投資であれば長期投資であるほど運用益の差は大きくなります。
信託報酬0.5%と2%で500万円を同じ条件で10年間運用したと仮定して、下記の図で運用結果を比較してみました。
このように10年後には90万円以上の差が生まれることになります。
信託報酬は0.1%でも安い投資信託を選択することをおすすめします。
最後に為替ヘッジの手数料ですが、こちらは外国の金融商品が投資対象の投資信託である場合、為替ヘッジがついている場合があります。
為替ヘッジは、投資対象の外国の金融商品の外貨と日本円の価値をあらかじめ取り決めておくことで為替リスクを減らすことができます。
しかし、為替ヘッジありの投資信託を選択した場合は手数料がかかるので、為替ヘッジありの投資信託を購入する場合、為替ヘッジの手数料にも気をつける必要があります。
投資信託は利回りだけでなく手数料にも気をつける必要があります。
投資信託の利回りの目安
投資信託の利回りについて理解できても、利回りの目安について知らなければ判断が難しいと思います。
ここからは投資信託の利回りの目安について詳しく解説していきます。
利回りの目安
まず、投資信託の利回りの目安については一概には言えません。
なぜなら、投資信託には国内、国外を問わず、株式、債券、不動産など投資対象にも様々なものがあり、値動きが激しいものもあれば小さいものもあります。
また、利回りは運用成績によって毎年大きく変化するため、平均値を出すことにあまり意味がないからです。
利回りの目安を知るためには実際にSBI証券やマネックス証券や楽天証券のトータルリターンや騰落率のランキングを参考に判断するのが一番です。
しかし、実際に例をだして計算をしてみなければ、実感が湧きにくいかもしれません。
たとえば、1000万円を投資信託に投資して、5年で利回り5%で運用できたと仮定します。
年間利回りは、「1000万円×0.05=50万円」であるため、5年間で資産は1250万円に増えることになります。
次は、他の資産運用の利回りと比較していきます。
1000万円から始める資産運用について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
1000万円から始める資産運用とは?7つの方法を徹底解説!
定期預金との比較
他の資産運用との比較もしていきましょう。
1年間、1000万円を投資信託に投資した場合と、1000万円を定期預金に預けた場合をそれぞれ比較していきましょう。
投資信託の利回りが5%であると仮定すると、定期預金の利回りはゆうちょ銀行では0.01%※となっています。
それぞれの年間で受け取れる金額を比較してみました。
- 利回り5%の投資信託に投資をした場合、
1000万円×0.05=50万円の利益になります。 - 金利0.01%の定期預金に投資をした場合、
1000万円×0.0001=1000円の利益なります。
差額は49万9000円になりました。
定期預金には元本が保証されているというメリットがありますが、投資信託に投資するほうが圧倒的にメリットが高いことがわかります。
基本的には利回りの高い金融商品に投資をしたほうが、最終的な利益も高くなります。
しかし、利回りが高いというだけで金融商品に投資をするのはリスクの高い投資方法です。
ここからは利回りの高い投資信託のリスクについて解説していきます。
※参考:ゆうちょ銀行の金利一覧
利回りが極端に高いとリスクも高い
投資信託をの利回りを比較していると、極端にトータルリターンが高い銘柄が見つかることがあります。
しかし、このような極端に利回りの高い投資信託は同時にリスクも高いという特徴があります。
たとえば、投資対象が途上国の株式など安定性に欠けるものが投資対象であった場合、リターンは大きいですがリスクも高いです。
基準価格が暴落してしまった場合、利回りと同じくらいの損害を受ける可能性があります。
投資対象が日本を含む先進国の債券であれば、リターンは少ないですがリスクも少ないです。
利回りの高い投資信託は大きな利益が出るかわりに、損失も同じくらい発生する可能性がある点に気をつけましょう。
人気のある投資信託
具体的な銘柄を知りたい人のために、楽天証券の「ファンドスコア上位銘柄月次買付ランキング」の上位の銘柄を一部紹介していきたいと思います。
- ニッセイ外国株式インデックスファンド
- emaxis slim 先進国株式インデックス
- たわらノーロード 先進国株式
この3つの銘柄は、信託報酬も安く、投資対象も安定してるため、優良な投資信託であるといわれています。
それでは、これらの投資信託について1つ1つ詳しく解説していきます。
ニッセイ外国株式インデックスファンド
ニッセイ外国株式インデックスファンドは、ニッセイアセットマネジメントが運用する投資信託です。
2013年にはじまった投資信託で、2019年5月の楽天証券の買付人数上位10銘柄にもランクインしています。
投資対象は日本を除く世界の主要な先進国株式であるため、リスクも低く安定した投資信託であるといえます。
購入手数料は無料であり、信託報酬は0.117%と最低水準となっています。
利回りは5年間のトータルリターンで、7%程度※が実績値になります。
もちろん、投資信託の利回りは変動するので、参考にする程度にとどめておきましょう。
※トータルリターンはSBI証券の数値を参考にしました。
emaxis slim 先進国株式インデックス
emaxis slim 先進国株式インデックスは、三菱UFJ国際投信が運用する投資信託です。
2017年にはじまった投資信託であり、三菱UFJ国際投信は他にも様々な投資対象の投資信託を設定しています。
投資対象は日本を除く22ヶ国の先進国の株式です。
日本にも投資したいと考えている場合、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)であれば日本を含む世界の主要な資産に投資できるのでこちらのほうがいいかもしれません。
信託報酬は0.117%で、利回りは2017年から2年間のトータルリターンで7.5%程度※が実績値となりますが、歴史が浅いので変動する可能性があります。
※トータルリターンはSBI証券の数値を参考にしました。
たわらノーロード 先進国株式
たわらノーロード先進国株式は、アセットマネジメントOneが運用する投資信託です。
2016年にはじまった投資信託ですが、アセットマネジメントOneも多くの種類の投資信託を設定しています。
投資対象は日本を除く22ヶ国の先進国の大型株から中型株まで約1300の銘柄で構成されています。
信託報酬は0.216%で業界最低水準ではありませんが、利回りは3年間のトータルリターンで年間9%程度※が実績値となっています。
※トータルリターンはSBI証券の数値を参考にしました。
高利回りの投資信託の3つのリスク
最後に分配金利回りの高い投資信託に投資した場合に発生するリスクについて解説していきます。
投資信託の利回りを考える上で分配金は重要です。
しかし、分配金利回りだけを考えて投資信託を選ぶと下記のような3つのリスクがあります。
- 分配金で投資信託の価格が下がる
- 分配金に課税される
- 信託報酬が高いと損をしてしまう
それではこれらのリスクについて解説していきます。
分配金で投資信託の価格が下がる
投資信託の仕組みの話になりますが、分配金はどこから支払われるのでしょうか?
分配金は投資信託の純資産から支払われるため、分配金を支払うと投資信託の基準価格が下がってしまいます。
分配金利回りが高ければ支払う分配金も多くなるので、基準価格はさらに下がります。
結果的に売買差益が少なくなってしまうことで利回りが減ってしまう可能性があるのです。
分配金の支払いで基準価格を減少させたくない場合は、分配金がない投資信託を選択するのもありです。
分配金に課税される
分配金を受け取ってしまうと分配金に課税されてしまい、結果的に税金によって得られる利益が少なくなる可能性があります。
ただし、分配金にも種類があり、普通分配金と特別分配金があり、課税されるのは普通分配金のみです。
特別分配金は厳密には元本の払い戻しであり、利益ではないため課税されません。
分配金に課税されたくない場合は、投資信託の購入時に分配金を再投資するを選択することで節税することができます。
投資信託の税金について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
投資信託の税金とは?3種類の節税方法についても徹底解説!
信託報酬が高いと損をしてしまう
最後に、分配金利回りが高くても信託報酬も高いと思ったように利益が出せないことがあります。
投資信託は利益を出すような運用を求めれば求めるほど信託報酬が高くなる傾向にあります。
もちろん利回り通りの成果が出せれば問題はありませんが、投資信託は価格が変動する金融商品なので必ず安定して利益が出せるわけではありません。
しかし、信託報酬による運用コストは日々間接的に発生するため、運用成果が悪い場合でも信託報酬は決まった率で支払うことになります。
そのため、分配金だけでは投資信託の基準価格の損失が埋められない場合でも、信託報酬でさらに損失が広がる可能性があります。
投資信託は分配金利回りだけではなく、信託報酬、投資対象、トータルリターンなど様々な観点から検討して選ぶ必要があります。
まとめ
投資信託の利回りについて理解していただけたでしょうか?
利回りの目安について理解したうえで、今回紹介した投資信託以外にもどのような銘柄があるか調べながらどの投資信託に投資するか判断してみてください。
利回りがよく、コストの少ない投資信託を長期保有して、より計画的な資産運用の計画を立てていきましょう。
投資信託についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
投資信託(投信)とは?基本的な仕組みを紹介!