米国のトランプ政権が発足し、世界株式の流れも大きく変化が訪れてきています。その影響を受けて、日本の株式、日経平均なども非常に高い変動を経験しています。 そこで、今回は株式投資を行う上で非常に重要となる6つの指標について解説をしていきます。株式投資を行う上で、必要になる投資ルールを自分なりに作るための参考にして頂ければとおもいます。
覚えておくべき株式指標と意味
利益に関する指標:株価収益率(PER)
この指標は投資を行う上で誰もが最も気にする指標で。企業の株価の割安度を図る判断材料となります。 実際の計算式は株価÷1株利益となりますが、ついでに1株利益についても触れておきましょう。 1株利益はEPSと言われ、計算式は税引き後利益 ÷ 期中平均発行済株式数です。 倍率の数字については、そもそもPERは「○○年先の利益までが現状の株価に含まれている」ことを表すものなので、数字が少ない方が割安になります。 例えば10倍なら10年間で20倍なら20年で株価相当になる為、どちらが割安か明白ですね。
資産に関する指標:株価純資産倍率(PBR)
PERと同様、この指標も企業の株価の割安度を測る判断材料となります。 実際の計算式は株価÷1株当たり純資産となり、一般的にPBRが1を下回ると非常に割安と言えます。 株式会社が解散した場合、株主は保有する株式数に応じて当該会社の純資産を分配してもらう権利を保有しています。 PBRが1の場合、株価と1株当たり純資産が一致するので投資した金額と同額が株主の手元に戻ってくる計算になります。 PBRが1より高ければ高いほど株主の手元に戻ってくる金額は少なくなり、逆にPBRが1を下回る場合には投資金額以上の資金を手に入れることができることになります。 このようにPBRが低ければ低いほど、企業が解散した時に手元に戻る金額が大きくなり、投資リスクが低いと言えるでしょう。
配当に関する指標:配当利回り
株式投資をすると、投資先の会社から配当という形でリターンを得ることができます。 このリターンをどれだけ効率的に得ることができるかを示した指標が配当利回りです。 実際の計算式は1株配当÷株価×100(単位:%)となります。 例えば株価が100円で配当が3円である場合には配当利回りは3%となります。 日経225を構成する企業の配当利回りの平均は1.8%程度ですが、これを上回る配当利回りを持つ企業も多数あります。 一般的に、配当利回りが高ければ高いほど、配当金額に対して株価が割安と言えるでしょう。
成長性に関する指標:株主資本利益率(ROE)
ROEは企業がどれだけ効率的に利益を上げているかを示しており、別の言い方をすれば企業の稼ぐ力を見る指標とも言え、近年注目が集まっている指標です。 ROEの実際の計算式は1株利益÷1株株主資本、もしくは利益÷自己資本となります。 ※自己資本 資本金+資本剰余金+利益剰余金+自己株式+有価証券評価差額等 この計算式を変形すると以下のようになります。 (利益÷総資産)×(総資産÷株主資本) ※総資産=株主資本+他人資本 正確に言えば海外では昔から重要視されていた指標でしたが、銀行との株式持合い解消により外国人株主が増加、結果モノ言う株主が増加した為、国内でも重要視せざるを得なくなりました。 このROEの数値が高い企業は効率的に利益を上げている企業であることになります。 会計基準も含め世界基準で企業が評価されるようになった現在では最も重要視される指標かもしれませんね。
経営の安定度に関する指標:株主資本比率
株主資本比率とは、総資産に対する株主資本の比率を示した指標です。 株主資本比率が高いほど、財務の健全性が高く、倒産の可能性が低いと言えます。 実際の計算式は株主資本÷総資産です。 この指標は業種によって大きく異なるため、異業種間での比較には向いていませんが、同業種間での比較には有用です。 株主資本比率に似た指標に自己資本比率があります。 株主資本比率の計算式の株主資本の部分を自己資本にすると、自己資本比率を算出することができます。 ※株主資本 資本金+資本剰余金+利益剰余金+自己株式 ※自己資本 株主資本+有価証券評価差額金等
支払い能力に関する指標:流動比率
流動比率とは、企業の短期的な支払い能力を示した指標で、数値が高いほど安定した支払い能力を持っていることになります。 計算式は流動資産÷流動負債です。 流動資産とは1年以内に現金化することのできる流動性の高い資産を意味しており、流動負債とは1年以内に支払う義務のある負債を意味しています。 流動比率が1であれば支払い能力と支払い義務の額が一致することになりますが、1を下回る場合には、企業は手元の資産では流動負債を返済することができなくなり、この返済のために新たに資金調達しなければならなくなります。
各種指標の具体的な活用方法
上記の指標を見て頂くと様々な角度で企業を考察することができるようになりますが、では株式投資にどのように活用いただくかの具体的な方法を見ていきましょう。 下記に各指標の使い方の要約を付けましたので復習をしながら見ていってください。
各指標の見方のまとめ
- PER 低い企業ほど一般的に割安
- PBR 低い企業ほど一般的に割安
- 配当利回り 高い企業ほど一般的に有望
- ROE 高い企業ほど一般的に有望
- 株主資本利益率 高い企業ほど一般的に安心
- 自己資本比率 高い企業ほど一般的に安心
- 流動比率 高い企業ほど一般的に安心
同業他社との比較
(例)ある業種に魅力を感じているが同業の企業数が非常に多く、個別企業を中々選べなかったので、まずはPERとPBRが低い銘柄から選ぶことにした。
過去の同社との比較
(例)最近、注目している企業があるがPERを見ると同業他社より株価が非常に割安だ、なぜ評価が低いのか、気になったので数年前からの株主資本利益率、自己資本比率、配当利回りを調べたら配当利回りが急低下しており他の指標も財務内容が劣化してきていることを現していた。
企業の未来を推測する
(例)企業のイメージがすごく好きで投資を考えているが、無配で他の指標も非常に割高だ、しかしROEが非常に高く、成長性を市場が評価しているようだ。
数値だけではわからない企業情報
各種指標を見ていくと割安な株や成長力のある株、または投資に値しないと思われる株等が自分なりの見方では明確になり、故に投資を実行する人も出てくるのですが、往全ての結果が上手くいくとは限りません。成長性もあり(高ROE)、高配当でPBRも1倍以下の企業があったとしても、株価が長らく低迷を続けたり更に値下がりを続けてしまう。 逆に借金まみれで業績も悪く、潰れそうな株が何日もストップ高を演じるなんてことは珍しくありません。どうしてそんなことが起こるのか予想通りにならないと憤りを覚える人も少なくはないですが指標だけが株価を決めている訳ではないのでそれは仕方ありません。それでは株価はどうやって決まっているのでしょうか?
株価の構成要因
株式の価格攻勢に影響を与える要因は無限大にあり、全ての要因を踏まえた銘柄選びは不可能です。しかし株価を構成する最大の決定要因は「需給関係」であり、買う株数と売る株数の需給で株価が決まるのが絶対原則です。 その需給を決めるにも売買に至る為の判断材料があります、人によっては占いかもしれませんし、いくら以下に値下がりしたら買うと決めてる人もいます。 それは千差万別で各個人によって異なりますが、大抵の人が今回、ご紹介した各種指標を参考にしています。 ですから各種指標は直接的なシグナルではなく前提条件という風に活用していただければと思います。
ディスクローズ
指標に関して一つ注意していただきたいのが、企業に関する数字のほとんどが企業側の発表を基にして計算しているということです。 例えばPBRですが原則では倒産価値を示す指標ですから、PBR1倍以下なら解散してくれた方が儲かる訳です。しかし実際に解散して株主に株価以上の資産を返還した企業は聞いたこともないですし、仮に解散しても現在ディスクローズされている以上にお金は戻ってくることは絶対にありません。 配当利回りにしてもあくまで予想ですから、高配当を期待して買ったとたん無配の発表があり大きく株価が値下がりをすることもあります。
粉飾決算
近年は会社ぐるみの粉飾決算は殆どなくなっていますが、東芝、オリンパス、カネボウ、ライブドア、日興コーディアル証券等の著名な企業でも問題とされたケースがありますし、新興市場の銘柄の中には粉飾決算並みのひどい業績修正を発表する企業もあります。当然ながら株価は大きく値下がりしますし、場合によっては上場廃止や倒産につながることもあります。 寝耳に水のケースもありますが、そういった事例の特徴は株価が異常な水準にあることです。 例えば配当利回りが10%近い、PERが3倍、PBRが0.2倍等々、外部環境による一時的な値段の変動であれば、そういったこともありますが恒常的に異常な水準にある銘柄は疑ってかかった方がいいかもしれません。
まとめ
さて今回は株式投資の経験が浅い方でも、イメージしやすい指標をピックアップしましたがいかがでしたか? アルファベット表記の指標も中身を見れば驚くほどシンプルだとご理解いただけたのではないでしょうか。 今回はそれぞれの指標を本質的にご理解いただく為に計算式を記載しましたが、ご自身で計算されなくても四季報や各種WEB上で簡単にデータは取得できますので、いろいろな比較や皆様オリジナルの企業価値判定法をお試しいただき、是非とも株式投資に役立ててください。