EXIA合同会社(以下エクシア)は、公式HPによると外国為替証拠金取引を主とした投資事業会社であると謳っていますが、その投資手口には詐欺の疑いがかけられており、一説には被害総額が723億円に上ると言われます。
2022年4月、エクシアは1万2,000人を超える出資者に対し、返金、配当が出来ない状況であることを正式に発表。この発表を機に、全国で次々と訴訟が起こりはじめました。いま現在の訴訟の件数や、判決状況など気になるところです。
なぜこのような大規模な詐欺事件が起こったのでしょうか、また出資者から集められた資金は戻ってくるのでしょうか。この記事では、大金を出資させたエクシアの詐欺手口と、行政処分の内容、裁判の状況などをお伝えしていきます。
エクシアの投資詐欺手口
社員券販売とポンジスキーム
エクシアの基本的な手口は、社員権販売とポンジ・スキームです。ポンジ・スキームとは、古典的な投資詐欺手法の一種で、投資家から資金を募り、高い利回りを約束しますが、実際には運用を行わず、新たな出資者から得た資金で前の出資者に配当金を支払う仕組みです。
この過程を繰り返し、初期の出資者には利益が支払われるように見えますが、実際には新たな出資者の資金で賄われているだけです。エクシアはまず、投資家に社員権を購入させ、それを出資金としました。
集めた資金を海外へ
集めた資金はシンガポールにある子会社の「EXIA Private Limited」に貸し付け、運用させ、そこで生じた運用益と、貸し付けの返済金がエクシア本体に入ります。
エクシアには他に「エクシア・アセット・マネジメント」と「エクシア・デジタル・アセット」という2つの子会社が存在し、これら子会社を通じて資産や株式の売り買いして利益を上げていました。
この利益の一部を出資者に還元していくので、運用がうまく回っているかのように見える、というのがエクシアの仕組みです。また、海外子会社に資金を送ることで、資金の流れが複雑化し、当局が追跡しにくい状況をつくり、被害者の資金の回収が難しくなりました。
エクシア本体は合同会社
追跡の目を潜っていた、もう1つの大きな理由は、エクシア本体が合同会社だったことです。
通常、金融取引業者が資金調達のために社員権を募集する際、金融商品取引法に登録する必要があるのですが、合同会社の場合はこれが不要になります。エクシアは本体を合同会社にすることで、あらゆる縛りから解放され、賛同者を集めやすい状況を作っていました。
※現在は法改正され、合同会社の社員権の募集は業務執行社員以外が行う場合、金融商品取引業の登録が必要。
菊池翔氏について
合同会社エクシアの代表社員である菊池翔氏は“天才的なトレーダー”として才能を開花させたという伝説の持ち主で、ネット上では「かけるん」と呼称されるのを目にします。
1977年生まれ、北海道札幌市出身、東京モード学園を卒業後、6年半の間にFX取引を独学で学んだそうです。2008年にはFX専業トレーダーとなり、翌年に利益率2500%トラックレコードを達成(自称)、ファンド法人のアドバイザーなどを経て2015年にエクシアを設立しました。
行政処分
エクシア・デジタル・アセットへの業務停止命令
エクシア合同会社の子会社である、エクシア・デジタル・アセット株式会社は2022年11月30日、関東財務局によって、業務停止命令、および業務改善命令を受けています。
(1)業務停止命令(法第63条の17第1項)
令和4年12月1日から令和4年12月31日までの間(ただし、当社において法第63条の5第1項第4号に規定する「暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制」を維持するための具体的な態勢の整備が図られ、その状況が当局において確認される場合には、それまでの間)、暗号資産交換業に関する業務(預かり資産の管理及び利用者の決済取引等当局が個別に認めたものを除く)及び当該業務に関し新たに利用者から財産を受け入れる業務を停止すること。
エクシア・デジタル・アセット株式会社に対する行政処分について:財務省関東財務局
エクシア・デジタル・アセットは暗号資産(仮想通貨)交換業者であり、「c0ban(コバン)」を活用したサービスを展開する企業です。資金不足や運営体制に問題があることなどを理由に、2022年12月31日までの間、業務を停止するよう命じられました。
その後、期限までに暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制を維持するための態勢を整備できる見通しが立っていないことから、業務停止期間を2023年1月31日まで延長したと報告されています。
エクシアからの独立を発表
2022年12月29日、エクシア・デジタル・アセットは、エクシア合同会社からの独立と、「エクシア・デジタル・アセット株式会社」から「Coin Master(コインマスター)株式会社」に称号変更したことを発表。
業務停止期間が明けた翌年2月1日より、暗号資産(仮想通貨)取引所「c0ban(コバン)取引所」を再開しています。
民事訴訟
最新の訴訟状況
エクシアに対する民事訴訟件数は、2024年1月現在で72件(中目黒49/霞ヶ関23)もあります。1万人以上も被害者がいると言われていますので、今後も訴訟件数は増えていく見込みです。
エクシア合同会社および、その幹部らに対しての訴訟は、複数の団体がそれぞれで行っているため、正確な訴訟日、判決、賠償請求総額などをすべて把握することは難しいです。
裁判記録は閲覧請求をしない限り見ることは出来ませんが、Xでの投稿や個人ブログで裁判の動向を追っているアカウントもあるようです!
エクシアに関するイベントをまとめている個人ブログ
判決を公表しているX
エクシア訴訟の発端
ことの発端は、2022年の4月、エクシア合同会社による「今月の評価額返還上限額到達のお知らせ」発表だと思われます。出資者に対し、返金、配当が出来ないという内容であり、これが引き金になって訴訟が始まりました。
最初の訴訟と思われるのは2022年5月19日、エクシア合同会社に対し、558万9,879円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年3分の割合による請求を求めた損害賠償請求です。
翌6月20日の、エクシア合同退社退社にともなう持分払戻請求とともに、こちらの記事で紹介されています。
エクシア被害弁護団
「エクシア被害弁護団」と称する法律事務所内の弁護士を中心に結成したエクシア合同会社の被害救済を目的とした弁護団があり、都度、希望者を募って複数名の集団訴訟を請け負っているようです。
HPでは、2022年9月2日に第1次提訴(原告32名・被告エクシア合同会社)、2022年10月5日に第2次提訴(原告22名・被告エクシア合同会社)が報告されています。
総額約32億4,600万円 損害賠償訴訟
2023年2月17日、投資会社「エクシア合同会社」に出資した259人が、会社と役員3人に対し、総額約32億4,600万円あまりの損害賠償訴訟を起こしたことが話題になりました。文集オンラインの取材によると、本裁判の過程で生じた裁判官による「証拠保全」を拒否したことが報じられています。
「証拠保全」とは、簡単に言うと裁判などに用いる証拠を事前に確保することですが、被告に対して執行の強制力はありません。あくまで協力の元に成り立つ「証拠保全」を拒否したことにより、裁判官の心証を悪くしたうえで「提示命令」によって結局は証拠を提出することとなりました。
なお、本件の判決はまだ出ていないようです。
まとめ
2024年1月現在、エクシアへの訴訟は72件もありますが、出資者が1万人以上にも上ることから、訴訟件数は更に増えていくことと予想されます。
判決が不明のものもありますが、原告が勝訴している訴訟の方が多いようです。しかしながら、敗訴している判決もあり、訴訟を起こせば必ず出資金が返ってくる、とは言い難い状況です。
エクシアの訴訟問題については、今後も注視していこうと思います。
投資に関するお問い合わせはINVEEKまでお気軽にお問い合わせください。