クラシックカー投資のパイオニア「Azimut」とは?オルタナティブ投資戦略と未来像に迫る

近年、オルタナティブ投資(代替投資)の一つとして「クラシックカー」が注目を集めています。かつては一部の愛好家の趣味と見なされてきたクラシックカー収集は、今や富裕層を中心に、堅実な資産形成の選択肢となりつつあります

この背景を踏まえ、本シリーズでは3つの記事に分けてクラシックカーファンドの魅力や、実際にそれを取り扱う企業の詳細をお伝えしていきます。

第二弾となる本記事では、世界的なクラシックカーファンドを運用する独立系資産運用グループ「Azimut」について、その実力と哲学を深く解説していきます。

目次

Azimutグループの軌跡と哲学

Azimutグループの物語は、1989年のイタリア・ミラノでの設立に始まります。2004年にはイタリア証券取引所に上場(ティッカー:AZM IM)を果たし、今日では欧州を代表する資産運用会社の一つとして確固たる地位を築いています。

「独立性」こそが最大の強み

Azimutグループを語る上で最も重要なキーワードが「独立性」です。特定の銀行や証券会社の傘下に入らないことで、親会社の方針や販売ノルマに一切縛られることなく、純粋に顧客の利益を最大化するための投資判断を下すことができます。

この哲学は、同社の株主構成にも明確に表れています。株式の約21%を経営陣や従業員が保有する一方、約78%は市場で自由に取引されており、外部資本による経営への影響を排した、顧客本位のガバナンス体制を構築しています。

世界20カ国に広がるグローバル・ネットワーク

Azimutグループは、イタリア本社を中心に、ヨーロッパ、アメリカ、中東、そしてアジア太平洋地域など、世界20カ国に拠点を展開しています。

運用資産総額(AUM)は1,330億ドル(約20兆円*)に達し、230名以上の投資専門家が世界中の市場をカバー。このグローバルなネットワークこそが、地域に根差した深い知見と、世界経済を俯瞰するマクロな視点を両立させる強さの源泉となっています。
*1ドル=150円で換算

成長を支える5つの柱

Azimutの持続的な成長は、以下の5つの柱によって支えられています。

Azimut社の成長を支える5つの柱
  • 独立性 (Independence): 顧客の利益を最優先する組織体制を組んでいます。
  • 長期戦略 (Long-term strategy): 2004年の上場以来、年平均12%という着実な資産成長を実現。短期的な市場動向に惑わされず、長期的な視点で資産を育成します。
  • 人材の安定性 (Talent stability): 経営陣の平均勤続年数は10年を超え、経験豊富なプロフェッショナルが長期にわたり顧客をサポートします。
  • 革新性 (Innovation): 常に新しい投資機会を追求し、2010年には欧州の資産運用会社として初めて中国のQFIIライセンス(適格海外機関投資家)を取得。近年では、プライベート・マーケットの新興マネージャーに投資するGPステーキングファンドを立ち上げるなど、業界の先駆者として走り続けています。
  • 持続可能性 (Sustainability): 1993年には早期にSRI(社会的責任投資)アプローチを取り入れたファンドを設立。2020年には国連責任投資原則(UN PRI)に署名し、ESG(環境・社会・ガバナンス)を投資プロセスに深く組み込んでいます。

アジアの金融ハブから世界へ – Azimutシンガポールの戦略的役割

Azimut Investment Management Singapore Ltd.(以下、Azimutシンガポール)は、2015年に設立されたアジア太平洋地域(APAC)の統括拠点です。

金融ハブとしての機能が成熟したシンガポールに拠点を置くことで、成長著しいアジアの富と投資機会をグローバルなネットワークに繋ぐ、極めて重要な役割を担っています。

多様なニーズに応えるサービスモデル

Azimutシンガポールは、富裕層や機関投資家に対し、主に以下の先進的なサービスを提供しています。

EAM(External Asset Management)

顧客の資産はDBSやバンク・オブ・シンガポール、UBSといった信頼性の高いプライベートバンクで管理(カストディ)しつつ、Azimutは独立した外部の資産管理者として、特定の金融機関の商品に偏らない、中立的な投資助言と運用を行います。これにより、顧客は最高レベルの資産保全と、オープンな商品選択という二つのメリットを享受できます。

VCC(Variable Capital Companies)

シンガポールで導入された最新のファンド形態であるVCCを積極的に活用。伝統的なファンド構造に比べて運営効率や税務上の柔軟性が高く、顧客の多様なニーズに合わせたオーダーメイドのファンド組成を可能にしています。

これらのサービスは、世界トップクラスの金融機関との強固なパートナーシップに支えられており、顧客に最高水準の金融エコシステムへのアクセスを提供します。

顧客視点のオーダーメイド資産運用

Azimutの資産運用の特徴は、徹底した顧客本位の姿勢と、それを実現するためのグローバルな組織力にあります。

オープン・アーキテクチャとグローバル投資委員会

Azimutシンガポールは、自社ファンドのみを提案するのではなく、世界中の運用会社が提供する商品の中から、真に優れたものを厳選して顧客のポートフォリオに組み入れる「オープン・アーキテクチャ」モデルを採用しています。

その選定プロセスの中核を担うのが「グローバル投資委員会」です。債券、先進国株式、新興国株式といった資産クラスごとに設置された委員会には、世界中の拠点から専門家が参加。定期的に開催される会議で、各地域のリアルタイムな情報と分析を持ち寄り、グループとしての一貫したマクロ経済観(Azimut Global View)を形成します。

このグローバルな知見に基づき、各顧客に最適な資産配分と具体的な投資戦略をオーダーメイドで構築していくのです。

新時代のオルタナティブ投資とフェラーリとの絆

Azimutグループの革新性は、伝統的な金融資産の運用だけに留まりません。超富裕層(UHNWIs)の間で高まる「情熱資産(Passion Assets)」への投資ニーズに応える、ユニークな投資機会の提供でも業界をリードしています。

情熱資産(Passion Assets)という選択

情熱資産とは、美術品、ワイン、宝飾品、そしてクラシックカーなど、金銭的な価値だけでなく、所有すること自体に喜びや文化的意義を見出せるコレクターズアイテムを指します。

これらの資産は、金融市場との相関が低く、インフレヘッジとしての機能も期待されることから、ポートフォリオの分散先として注目されています。

その代表例が、希少価値の高いクラシックカーに投資するクラシックカーファンド「Azimut Automobile Heritage Enhancementです。これは世界初の「エバーグリーン型(期限を設けない)」クラシックカーファンドであり、歴史的価値のある車両の価値を長期的に高めていくことを目的としています。

フェラーリ社との強固なパートナーシップ

このファンドの独自性を際立たせているのが、自動車界の至宝、フェラーリ社との強固なパートナーシップです。

Azimutのファンドは「フェラーリ・ハイパーカー・プレミアムパートナー」に認定されており、これにより他の投資手段では決して得られない、特別な価値を提供しています。

具体的には、フェラーリが持つ専門的な知見やネットワークを活用した投資対象車両の選定が可能になるほか、ファンドの投資家はマラネッロ本社での特別イベントに参加するなど、唯一無二の体験を享受できます。

このパートナーシップは、2023年、2024年のル・マン24時間レースでのフェラーリの連続優勝によって、その成功を世界に示しました。

まとめ – Azimutが描く未来の資産運用

Azimutグループは、設立以来一貫して守り抜いてきた「独立性」という哲学を土台に、グローバルな知見とローカルな専門性を融合させ、顧客一人ひとりに最適なソリューションを提供してきました。

シンガポールをハブとするアジア戦略は、その成長をさらに加速させる原動力となっています。伝統的な資産運用で着実なリターンを追求する一方で、クラシックカーファンドのような情熱資産への扉を開く革新性。この両輪こそが、複雑化する現代において富裕層が求める理想的な資産運用パートナーの姿と言えるでしょう。

次の記事では、Azimutシンガポールの革新性の核となるクラシックカーファンド(Azimut Automobile Heritage Enhancement)について、詳細に解説していきます。

クラシックカーファンドに関するお問い合わせはINVEEKまでお気軽にお寄せください。




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