感染のリスクがある状態で勤務をしている人は新型コロナウイルスが労災の対象になるのか気になる人も多いと思います。
感染症の対策をしていても職場や通勤中に感染してしまう可能性は0ではありません。
万が一、感染をしてしまったときにどのような場合に労災の対象になるのか確認しておくことは重要です。
この記事では新型コロナウイルスで労災の対象になるのか分かりやすく解説していきます。
新型コロナウイルスで労災として認定される要件
新型コロナウイルスの感染で労災として認定される可能性はあります。
労災には、業務災害と通勤災害の2種類があり、どちらも要件を満たしていると判断されれば労災認定されます。
ここからは新型コロナウイルスの感染で業務災害と通勤災害に認定される要件について解説します。
新型コロナウイルスで業務災害と認定される要件
業務災害の要件は勤務中に事業主の支配下にあるとき、業務が原因となって発生したものが対象になります。
ケガだけではなく病気も業務災害の対象となっているので、新型コロナウイルスに感染していて要件を満たすのであれば業務災害に認定されます。
病気が業務災害として認定される条件は「事業主の支配下にあるときに有害因子にさらされることにより発症した」ことが証明される必要があります。
具体的な要件は下記の3つが挙げられます。
- 労働の場における有害因子の存在
- 有害因子へのばく露条件
- 発症の経過および病態
有害因子とは、新型コロナウイルスであれば病原菌のことを指しますが、病原菌以外の有害な物質や、心身に負担がかかる作業をさせた場合も有害因子に含まれます。
新型コロナウイルスの場合は、労働の場に感染者がいたかどうかが重要です。
次に、有害因子にに対してどのような状況でどれほどの期間さらされていたのかを把握し、健康障害を引き起こすのに十分であったかを検討します。
感染者がいたと仮定して、濃厚接触をしていたかどうか、どれほどの時間接触していたのかを把握することで感染との因果関係を明確にします。
最後は、病気の発症がこれまでの要件を踏まえたうえで医学的に妥当であるかについてです。
新型コロナウイルスの感染者と職場で長い時間濃厚接触をした結果、感染したのであれば病気の発症から経過を見て医学的に矛盾がないかどうか確認する必要があります。
以上が新型コロナウイルスで業務災害として認定される要件です。
次に通勤災害として認定される要件について解説します。
新型コロナウイルスで通勤災害と認定される要件
通勤災害における通勤とは住居と職場の往復が基本です。
例外として他にも通勤として認定される移動がいくつか存在します。
- 就業の場所から他の就業の場所への移動
- 日用品の購入のために店に立ち寄る
- 公共職業能力開発施設の利用
- 診察や治療を受けるために病院に行く
- 要介護認定の家族に対する介護
基本的に住居と職場の往復で他の場所に立ち寄った結果、病気やケガをしてしまった場合は通勤災害として認められません。
しかし、上記のような目的で他の場所に立ち寄った場合は必要な移動とみなされます。
住居と職場の移動やその他の必要な移動の最中に新型コロナウイルスに感染したことが証明された場合は、通勤災害として認定されます。
次は新型コロナウイルスで労災として認定された場合に具体的に支給される金額について解説していきます。
新型コロナウイルスに感染し労災の対象になった場合
仮に要件を満たし労災の対象になった場合は、治療費は全額労災によって支給されます。
新型コロナウイルスは指定感染症に指定されたので公費負担となりますが、所得税額に応じて一部自己負担がある自治体も存在します。
労災による休業補償は休業してから4日後に始まります。
その後、直近の3ヶ月の平均給与額を計算し、平均給与額の60%の休業補償と、20%の休業特別支給金が支給され、合計で給与の80%が1日に労災で支給される金額になります。
また労災による補償を受けられる期間に上限はありません。
ただし、働けない状態であることと療養していることの2つの条件があるので、働ける状態になった時点で労災の給付は終了します。
また、労災で休業した場合、事業主は治療のため休業している期間と休業期間が終了して30日間は従業員を解雇できません。
労働者は要件さえ満たしていれば安心して労災を申請できる仕組みになっているので、要件を満たしているのであれば申請をしましょう。
新型コロナウイルスの労災認定の現状
新型コロナウイルスの労災認定の要件について解説しましたが、実際に感染し申請しようと考えても要件を満たしているかどうか分からない場合もあるかと思います。
労災であるかどうか認定するのは労働基準監督署なので、少しでも可能性があるのであれば労働基準監督署に連絡をするのがよいでしょう。
新型コロナウイルスの感染が労災であると認められるのであればよいのですが、要件をすべて満たせず労災として認められないケースもあるかと思います。
次に、労災として認められなかった場合はどうすればいいか解説していきます。
労災として認められなかった場合は傷病手当金を受給する
新型コロナウイルスに感染した影響で休業をした場合は傷病手当金を受け取ることができます。
新型コロナウイルスの影響で療養のために労働ができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の2/3の割合について傷病手当金が補償されます。
陽性と判断された日から起算するのではなく、陽性と判断される前に自宅療養を始めた日から起算します。
労災の対象にならなかった場合は、休業補償や傷病手当金の受給を検討してみましょう。
新型コロナウイルスの休業補償についてさらに詳しく知りたい人はこちらの記事をチェックしてください。
新型コロナウイルスの休業補償について分かりやすく解説します!
また新型コロナウイルスを含む感染症にかかった因果関係を明らかにするためには感染経路を証明する必要があります。
感染経路の証明をしやすくなる方法についてある取り組みがありますので最後に紹介します。
AppleとGoogleが提携するアプリを利用する
AppleとGoogleは新型コロナウイルス感染者と濃厚接触をしたかどうか追跡し確認するBluetooth技術を用いたアプリを開発すると2020年4月10日に発表しました。
(※参考:AppleとGoogle、新型コロナウイルス対策として、濃厚接触の可能性を検出する技術で協力)
このアプリを利用すれば、労災との因果関係を証明しやすくなる可能性はあります。
アプリの精度や利用者数にもよりますが、濃厚接触の可能性を検出することができれば感染経路の特定に役立つ場合もあるでしょう。
アプリは5月にリリースされる予定なので、新型コロナウイルスによって労災が発生する可能性がある職業の人は尚更ダウンロードしておいたほうがよいでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスで労災として認定される要件について解説しました。
最終的に労災として認定するのは労働基準監督署なので、要件を確認して労災の可能性があるのであればまず相談をしてみましょう。
仮に労災として認定されなかった場合は傷病手当金の受給や、資金に困っている場合は助成金や融資も検討してみましょう。
新型コロナウイルスの助成金や融資について詳しく知りたい人は下記の記事をチェックしてください。